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RPG『マッドプリンセス-華麗なる闘士たち-』大型アップデート配信 やり込み系ダンジョン追加、レベル上限は1000に

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ゲーム制作サークルあとらそふとは30日、フリーシナリオRPG『マッドプリンセス-華麗なる闘士たち-』の大型アップデートとなるバージョン2.00の配信を開始した。

『マッドプリンセス-華麗なる闘士たち-』は、各地を旅し、さまざまなキャラクター達と交流しながら物語が展開していく作品。依頼をこなしたり、闘技大会に出場したり、ダンジョンを探索したりと自由にプレイを進めることができ、装備品によって変化する多彩なスキルを駆使して戦うバトルも特徴となっている。昨年末のコミックマーケット93で初頒布され、今年4月末にはDLsite.comにてダウンロード販売が開始。執筆時現在でDLsite.comでの販売本数が1,800本を超えるなど人気を博している。

バージョン2.00の目玉と言える新要素が、やり込み系のエンドコンテンツ「夢幻の訓練宮」だ。クリアデータを引き継いで新規プレイすると入れるようになる無限に続くダンジョンで、レアな装備やキャラクター育成に役立つ特殊なアイテムを入手できる。先の階層へ行くほど強い敵が出現し、入手できる装備も強くなっていく仕組みだ。また本バージョンでは、レベルの上限が1000まで解放された。

そのほかにもさまざまな仕様変更や要素追加が行われている。たとえば武器を装備しないと素手になる仕様は廃止され、小手を装備することで格闘スタイルとなる仕様が実装された。また、パートナーとの連携スキルが実装され、その内容は主人公とパートナーの戦闘スタイルの掛け合わせで変化する仕組み。装備品へ付与される効果では、戦闘開始から一定ターン攻撃力が上がる「急襲」、受けたダメージの一定割合を相手に与える「ダメージ反射」など14種類が追加されている。

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パートナーとの連携により、強力なスキルを使用できるようになった

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マッドプリンセス-華麗なる闘士たち-(あとらそふと)
フリーシナリオの闘士育成RPG


フリゲSF RPG『Choir::Nobody』 100以上のパーツでロボをカスタマイズ、電子世界で戦い抜け!

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多彩なパーツを自由に組み合わせて、自分だけのロボを作って戦う——ロボット好きなら浪漫を感じずにはいられない体験であり、3Dアクションゲームを中心にさまざまな名作を思い浮かべる方も多いだろう。

今回は、戦況に影響を与える多数の数値やパーツの重量による機動力の変動など、カスタマイズ性の高いロボットバトルならではの要素をコマンドRPGで再現した意欲作『Choir::Nobody』を紹介しよう。本作は記憶喪失の少女が死を繰り返しながらダンジョンを攻略していくRPG『Acassia∞Reload』(紹介記事)の作者であるanubis氏の新作で、フリーゲームとして公開されている。

電子世界を舞台に展開するノンフィールドRPG

本作の舞台となるのは、人類が身体を捨てて移り住んだ電子世界。人工存在《電子精神》が反旗を翻したことにより、人類は追い詰められていた。主人公は人型戦闘兵器《クワイア》のパイロットである男「ゼロ」。相棒の「シルベリア」やオペレータの「リゼリア」という二人の少女と共に傭兵業を営んでいたが、かつて軍属だった時代のゼロやシルベリアに憧れる少女「シャルロット」が仲間になることを希望してゼロ達のもとに訪れたことから物語が展開していく。

ゲーム進行はADV+RPGといった趣のノンフィールドタイプで、《電子精神》掃討の依頼をこなして資金を稼いだり、3人の少女達との会話イベントを発生させたりしながら日付が進んでいき、一定の日数でボス戦に相当するイベント戦闘も発生、作中時間で15日が経過するとエンディングとなる。戦闘はゼロ、シルベリア、シャルロットがそれぞれの《クワイア》を駆って出撃する最大3人パーティで、敵味方が入り混じって順次行動するCTBとなっている。

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人型戦闘兵器《クワイア》に乗って《電子精神》と戦っていく。戦闘はCTBのコマンド選択型

複数の武装を組み合わせて攻撃手段を確立

ロボットものRPGとしての本作の醍醐味は、なんといってもパーツ購入による自由度の高いロボットのカスタマイズ。主武装1つと3つまでの副武装、ジェネレータを自由に付け替えることができ、加えてさまざまな効果を持つオプションも5つまで装備可能。さらにゼロは機体自体を乗り換えることができる。

武装はタイプによって、威力や基本命中率、攻撃回数、一度使ってからリロードが完了して再使用可能になるまでのターン数などの傾向に違いがあり、またレーザー系などの使用にエネルギーを消費するタイプと実弾銃などのエネルギーを消費しないタイプに分けられる。

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主武装、副武装それぞれ個性的なものが多数用意されている

こうしたさまざまな武装を複数組み合わせ、攻撃手段を確立していく。強力だがリロードが長かったりエネルギー消費が激しい武装ばかりで固めるとターンが回ってきても攻撃できない……なんてこともあり得るので、取り回しのよい武装をサブで用意しておくなどバランスを取るのもポイントだ。

ジェネレータはエネルギーの供給(ターンごとの自動回復)や攻撃の威力上昇などに関わるパーツで、こちらもステータスの変動傾向が違う数種類が用意されている。

これらのパーツなどは総計で100種類以上用意されており、自由に組み合わせることが可能。ただし重量の概念があり、パーツの総重量はCTBにおける行動頻度に影響してくる。さまざまな要素を計算に入れ、3つの機体の役割分担も考えながら自分だけのロボを作り上げていくのが本作の醍醐味となっている。

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多数のパーツを組み合わせて自分だけのロボを作り上げていく

スキルを駆使し、さまざまな数値を把握するのが勝利へのカギ

戦闘においてはスキルも重要。スキルはレベルアップ等で習得する機体固有のもののほか、レベルアップ時に入手できるポイント「SP」を消費して、スキルツリーによりさまざまなアクティブスキルやパッシブスキルを習得できる。本作ではレベルアップで機体ステータスが上昇しないため、パーツのセッティングと並んでパッシブスキルによるステータス上昇などが機体カスタマイズの方向性を決める要素となっている。

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スキルツリーは5系統。アクティブ・パッシブともにさまざまなスキルが用意されている

アクティブスキルは妨害や回復、自己強化などさまざまなものがあり、武装と同様にエネルギー消費やリロードも発生。気軽に何度も使えるものではないぶん、戦術の要となるようなスキルも揃っている。たとえばブレードタイプの武装は非常に威力が高いが基本命中率が5~15%と著しく低い“浪漫武器”で、一時的に攻撃を必中化するスキルと組み合わせることで真価を発揮するといった具合だ。

戦闘に関する要素としては、ほかにも攻撃の威力に関わるステータスが3種類あったり、防御に関わるステータスが2種類あったり、ミサイル系の武装の使用などで熱が溜まり一部行動に制限がかかったりと、なかなかに複雑でテクニカル。イベント戦闘では特殊な状況が発生することもままあり、手持ちの武装の特性の把握やスキルの活用、エネルギー残量の管理などが重要になってくる。

とはいえ最初からすべて理解する必要はないし、任意での依頼遂行によるパーツ購入資金稼ぎや訓練によるSP稼ぎも行えるため、自分の好みを詰め込んだセッティングで戦うことも十分可能だ。一方、こうした任意の稼ぎを一切行わずイベント戦闘のみでもゲームを進行させることはでき、この場合は限られた資金とSPの範囲で購入するパーツや習得するスキルを厳選する縛りプレイを楽しめる。

SFとしてもアツい作品。激化する戦いと世界の行く末は……

本作は「ライトノベル風」を謳っており、独自に作り込まれたSF設定が物語を演出する。ゼロの夢に登場する謎の少女による予言めいたメッセージや徐々に激化していく《電子精神》の攻勢など、15日という期間の中で事態が大きく動いていき、緊迫した状況の中で世界の真実へと迫っていくような展開も見どころだ。また、ゼロと行動を共にする3人の少女達はそれぞれヒロインとして異なる魅力があり、個別のエンディングも用意されているなどギャルゲー的な側面も楽しめる。

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ゼロの夢に現れる謎の少女

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それぞれに魅力的なヒロイン達との交流のひとときも

ロボットに乗って苛酷な世界で戦い抜くというアツい展開を、システムの面でも物語の面でも存分に体験できる作品。ロボットものが好きならぜひプレイしてほしいRPGだ。

[基本情報]
タイトル:Choir::Nobody
制作者:anubis 氏
クリア時間:4時間前後(公称)
対応OS:Windows
価格:無料

ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/18231

フリーゲームRPG『グリム・ディエムの冒険録 あるいは忘れられた海の底で』 美しく神秘的な海底世界を冒険しよう!

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RPGといえば多くの作品で題材に挙げられる冒険。未知の世界への興味に心躍らせワクワクする気持ちは、おそらく誰もが抱いたことのあるものだと思います。あるいは好奇心旺盛なら、子供の頃に知らない町や自然を探検したくなった人もいることでしょう。

今回は、そんな冒険心をくすぐり童心に返れる作品、海底監獄に迷い込んだ少年が少女と共に脱出を目指すRPG『グリム・ディエムの冒険録あるいは忘れられた海の底で』を紹介させて頂きます。本作は2014年にRPGツクール2000で初公開され、その後2016年に同じRPGツクール2000でグラフィックを一新してリメイク、さらに2018年8月にRPGツクールMVへと移植となった経緯があり、移植するたびに大幅にグレードアップされています。制作者はめぞん氏。

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叙述と因果により、世界を冒険することを望む少年の冒険録

本作を紹介する上で欠かせないのが『世界の驚嘆すべき叙述』です。本編から引用すると「歴史のない時代にレヴェルジュアンが執筆。500年前より広く流布された全121巻からなる世界の叙述。それは己の世界しか知らない、あらゆる種族が外の世界へ興味を持つ火種となった。叙述に魅入られたものたちは故郷を捨て、まだ見ぬ世界へと旅立った。」とのことで、本作において世界のすべてが記述されているといっても過言ではないくらい重要な史料となっています。本作の主人公『グリム・ディエム』も叙述に魅入られた冒険者の1人であり、本作はグリムが叙述の世界を見て回るため他の大陸行きの船に乗っている場面から始まります。

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叙述に記載がある地域は冒険者たちによって次々と発見されており、叙述に載っているならイルブランシュ(死後の世界)すら有るだろうと信用されているほど

しかし、突然の大嵐で海へ投げ出されたグリムは海底監獄地下の忘れられた洞窟へと沈んでいき、そこで謎の少女『フィルマ』と出会うことに。外見はグリムと同じユマ族(人間系の種族を指す。この世界には多くの種族がいるためユマ族はその中の1種族にすぎない。純血のユマ族は弱いが他種族との間の混血はユマ族の姿になりつつ他種族の能力を引き継ぐ)のようですが、なぜ閉じ込められていたのか・・・。ふたたび地上を自由に冒険するため、2人で海底から脱出を目指す物語になります。

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豊富なスチルが本作の魅力。なんと2000版と比べて約3倍に増加! 上記イベントも2000版では上の1枚のみだったが、肩車の場面に追加されている

冒険の舞台となる海底監獄は負のイメージが強そうですが、海底らしく青色で統一されていて美しく神秘的な世界が広がっています。戦闘はシンボルエンカウントが採用されており、シンボル回避が容易な配置のためプレイヤーの自由に探索できます。

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(左)MV版 (右)2000版。従来の青を基調としたマップに陰影が加わり、地形も調整されてより美しくなっている

また、海底監獄という閉鎖的な舞台にグリムが流れ着いたことによる各登場人物の心情の変化が丁寧に描かれている点も見どころです。「1カ所に留まって生涯を終える」か「故郷を捨てて冒険の旅に出る」という2つの対立する価値観に各登場人物が翻弄される様子が本作のシナリオのテーマと言えるかもしれません。

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第三監獄監理長の『ミナモ』 叙述や冒険者たちの本を収集して地上に興味を持っている。終盤のミナモの葛藤は本作1番の見どころのひとつ

さくさくアニメーションする戦闘がすごい!

戦闘はグリムとフィルマが1体の敵と戦う2対1のサイドビューで、敏捷性が高ければ高いほど行動ゲージがたまって優先的に行動できるCTB(カウントタイムバトル)方式となっています。高威力だが弾切れ時に充填が必要な「銃」、低威力ながら攻撃後に防御態勢をとる「短剣」、そして「アイテム」を使い分けて戦うグリム。攻撃する「恵術」、味方一人を「回復」、味方一人の攻撃力を「強化」、2人の防御力を上げつつグリムが倒れていたら戦闘不能から復帰する「防壁」、自身のGPを回復する「瞑想」からなる様々な術を扱うフィルマ。この2人の連携がカギを握ります。

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グリムは武器を、フィルマは術を駆使して戦う

そしてなんといっても、本作の戦闘における最大の魅力はドットアニメーションです。それはもう驚くほどサクサク動きます! 銃・短剣・充填・アイテムや各種術にそれぞれモーションが用意されていて、どれもしっかり動いてくれます。よく見ると、残りHPが少ない時の瀕死モーションまであるので必見です。

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MV版ではグリムの短剣待機モーション追加に加え、一部のボス敵も動くように

また、本作の特徴的な仕様として「楯」と呼ばれる装備品を6つまで身につけることで能力値をカスタマイズできる機能があります。楯は敵を倒したときのドロップ、イベント、ダンジョン探索などで入手でき、シナリオが進むほど多種多様な楯が揃ってきて好みのステータスに調整できるようになります。

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最適な楯の組み合わせを模索するのが楽しい。極端な例になるが、攻撃力・防御力に特化するとこんな尖ったステータスにすることも可能

MV版ではおまけ要素が充実

筆者が2000版をプレイした当時、それほどおまけ要素はなかった印象でしたがMV版では大きくテコ入れされています。代表例が釣りでしょうか。釣り場があちこちに点在し、エサさえあればできるので冒険の途中で気軽にやれます。敵目録・装備品目録・釣り目録などの図鑑を完備していて、さらにPlayStation系列のハードでは定番の「トロフィー」に相当する要素「足跡」もあります。

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おまけ要素の釣り。釣り目録をはじめ目録類は収集率100%にするといいことがあるかも

また、終盤の三章に入ると2000版にはなかったサブイベントが多数発生するようになります。詳細についてはネタバレ防止のため触れませんが、2000版プレイ済みのユーザーでも十二分に楽しめますので是非とも再プレイをお勧めします。

さあ、叙述の世界の冒険に思いを馳せよう

本来、冒険を題材にした作品ならばもっと世界を自由に冒険できるものだと思いますが・・・。本作はあえて閉鎖的な空間にグリムたちが身を置くことで冒険への渇望が強まり、そもそもの死生観に至るまで含めた心情描写に着目している特異な作品といえるでしょう。プレイヤーに開示される叙述の世界の情報はごく一部の断片的なものでしかありません。でもその明かされない裏側には多くの種族や未知の地域が存在するだろうと思うとワクワクしてきませんか? そんな純粋な気持ちをプレイして感じて頂けたら嬉しく思います。

[基本情報]
タイトル『グリム・ディエムの冒険録あるいは忘れられた海の底で』
制作者 めぞん(制作者様サイトはこちら
クリア時間 8時間~12時間くらい
対応OS Windows 7/8/10
価格 無料

ダウンロードはこちらから
https://freegame-mugen.jp/roleplaying/game_7371.html

ノンフィールドローグライクRPG『アムネジアヒーロー』 ロックされたシステムを解放し、全5ステージを踏破せよ!

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マップ探索などの要素を削ぎ落とし戦闘にフォーカスした「ノンフィールドRPG」と、ランダムに入手したアイテムを駆使して状況を切り抜けていく「ローグライクRPG」。この二つのジャンルには親和性もあり、『ロードライト・フェイス』(紹介記事)やその続編である『グレナサクリファイス』(関連記事)、『箱舟のノワール』(紹介記事)など、「ノンフィールドローグライク」と呼べるようなRPGが生まれ続けている。

今回紹介するフリーゲーム『アムネジアヒーロー』も、そんなノンフィールドローグライクRPGの一つ。レベルアップ時に入手できるポイントを使って、スキルの習得に加えて防御やクリティカル、移動中のさまざまな操作など「このゲームでできること」自体を増やしていけるのが特徴の作品だ。

「能力の復元」によりゲームシステムのロックを解放

ゲームは全5ステージ構成で、各ステージでは前進し続けながら敵との戦闘や探索ポイントでの探索といったランダムに発生するイベントをこなし、最後に待ち受けるボスを倒すことでステージクリアとなる。戦闘は1vs1のコマンド選択型で、敵の能力値や次の行動、先攻・後攻が画面に表示される。オープンな情報をもとに、敵のさまざまな攻撃をどう凌ぐか、あるいは先に倒しきるかなどと戦術判断を下していくのが面白い。

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探索や戦闘を繰り返しながらステージを攻略していく

プレイヤーキャラクターの能力値は与ダメージに影響するATK、被ダメージ軽減に影響するDEF、スキルやアイテムの効果量、クリティカル率等に影響するTEC、先制行動率や状態異常の耐性、回避率等に影響するSPDの4種類。レベルアップ時のボーナスで任意に上げられたり、装備品の効果で増減する。そしてレベルアップ時には「GP」と呼ばれるポイントも入手可能で、これによる「能力の復元」が本作の要となっている。

本作の主人公は記憶喪失という設定で、忘れている能力を思い出していくという形になる。そのためか、復元(習得)する内容は戦闘スキルに留まらず、防御コマンドやクリティカル・回避、攻撃時の与ダメージ表示など、システム面まで含めた「戦い方そのもの」にも及ぶ。いくらTECやSPDを上げても、能力を復元してシステムのロックを解除していかなければクリティカルも回避も発動しないのだ。

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RPGにおける基本的なコマンドと言える「防御」も、能力を復元して初めて使用可能になる

また、探索ポイントでの探索可能回数が増えるなど、移動中に効果を発動する能力もさまざまなものが用意されている。1回のプレイですべての能力を復元するのは難しく、プレイスタイルや成長方針に応じて復元する能力やその優先順位を選定していくが本作の醍醐味。たとえばSPDを上げないプレイなら、発動にあまり期待できない回避は敢えて捨ててGPを他に割り振る、といった選択もアリなわけだ。

復元した能力とのシナジーも発生するユニークな装備品やアイテム

能力の復元と並び、プレイに大きな影響を与えるのがランダムに入手できる装備品やアイテム。装備品は武器と防具を1種類ずつ装備可能で、能力値が増減するほかに「攻撃を受けた際に被ダメージ量に応じて敵にもダメージを与える」など、さまざまな特殊効果を備えたものが登場する。

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さまざまな特殊効果を持つ装備品を使いこなすのも醍醐味。装備画面では能力値によって算出されるクリティカル率等の各種数値も確認できる

アイテムは回復アイテムなどの消費物に加え、持っているだけで効果を発揮するパッシブスキル的なアイテムも存在し、複数持つことで効果が累積するものも。とはいえその分アイテムの所持枠を圧迫するのがトレードオフ要素だ。装備品の特殊効果やパッシブスキル的なアイテムには復元した能力の効果を上げるようなものもあり、このシナジーも装備選びやアイテム管理の戦略性を高めている。

装備品やアイテムは、探索時にランダムに遭遇する商人から購入したり、逆に商人に売却することも可能。この際の対価である「AP」は、戦闘スキルの使用でも消費するポイントとなっている。買い物とスキルで共通のポイントを使うため、リソース管理の要素も強い作品だ。

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戦闘スキルは相手のDEFを無視する攻撃や各種状態異常を付与する攻撃など、使いこなせば強いものが揃っている。リソースが買い物と共有なのが悩ましくも面白いところだ

ステージ分岐やクリアに必須ではない強敵も。やり応え抜群の一作

本作をノンフィールドローグライクRPGの先行作品と比較した場合、クラス(職業)やキャラクターの選択といった、プレイ開始時点での能力傾向を差別化する要素がないことは特筆点と言えるだろう。「全クラス、全キャラでのクリアを目指す」といったやり込みの指針が存在しないのでリプレイ性はやや下がるが、その分毎回完全に1からキャラクターをビルドしていく楽しさがある。筆者の場合は「序盤に引けた良い装備品を活かす形で成長方針や復元する能力を決める」というプレイをしてみたが、毎回思わぬプレイになってなかなか面白い。

リプレイ性の面では、全5ステージのうち2~4ステージは2種類から選択するようになっているのもポイント。進行のバリエーションを楽しめるほか、「今回はSPD重視のステ振りや装備品で状態異常への耐性を上げているので、状態異常を仕掛けてくる敵が多いステージを選ぶ」といった戦略性にも繋がっている。

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2ステージ目から4ステージ目までは2種類のステージから行き先を選択可能。それぞれ傾向の異なるユニークな敵が出現する

また、各ステージには制限ターンがあり、これを超えると「EXエネミー」が出現、プレイヤーを追い掛けてくる。ステージのボスより手強い相手なので戦闘や各種イベントでターン数をかけすぎずに逃げ切るのが無難なのだが、敢えて倒すことでレアなアイテムや装備品を入手することも可能。一種のチャレンジ要素にもなっているという仕組みだ。

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EXエネミーはステージボス以上の強敵。特殊な行動を見極め、倒すことができるのならレアなアイテムや装備品を入手するチャンスでもあるが……!?

本作はゲームオーバー時の引き継ぎ要素や繰り返しプレイによる初期能力の強化要素はなく、難易度はやや高め。それだけに難所を突破した際の達成感はひとしおだ。難易度設定は2種類用意されているほか、1周クリア後には本編と異なる4ステージで、若干変化したルールで遊べる「EXモード」も解放される。

なお本作は、同作者による前作『アンダーグラウンドヒーロー』(紹介記事)の番外編的な作品となっている。ストーリーは前作をプレイしていると理解しやすい面もあるが、システム的には前作とは別物で、作者によると本作のみでも「問題なくプレイできます」とのこと。前作も独自のシステムに凝った意欲作でそれぞれ異なる魅力があるので、興味があればどちらからでも、是非プレイしてみてほしい。

[基本情報]
タイトル:アムネジアヒーロー
制作者:霜月六 氏
クリア時間:1周1時間程度(公称、プレイヤースキルやランダム要素の引き具合などによって前後)
対応OS:Windows(ダウンロード版)、Webブラウザ(ブラウザ版、PCでのプレイ推奨)
価格:無料

ダウンロードはこちらから(フリーゲーム夢現)
https://freegame-mugen.jp/roleplaying/game_7448.html

ブラウザ版のプレイはこちらから(RPGアツマール)
https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm5124

よるしかあそべない、ふしぎなあーるぴーじー『ヨルダケ』 こんやも、さまようあにをおいかけます。

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人、動物の睡眠規則が乱れることに起因して生じる睡眠障害の一つに、「睡眠時遊行症(すいみんじゆうこうしょう)」がある。別名「夢遊病(むゆうびょう)」と呼ばれるこの病気は、睡眠中に発作的に起こる異常行動で、無意識の状態で起き、歩いたり、何かを行った末に再び眠りに着くが、その間の出来事の記憶がない状態ことを言う。その時間は数十秒から30分以上に及ぶことがあり、特に子供によく見られる。

しかし、成人して以降もこの症状を発するケースも少なくなく、昨今ではドラマ『踊る大捜査線』の新城賢太郎役などで知られる俳優の筧利夫氏が関西テレビの某番組にて告白したことがニュースとなった。

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今回紹介する『ヨルダケ』の作者でイラストレーターのじゃむさんっぽいど氏も、夢遊病ではないかと疑惑をかけられた過去があるという。更に毎晩夢を見ることも多かったとのことで、それらの経験を元に本作を個人的に作るに至ったようだ。

2018年9月25日より「ふりーむ!」にて、PC(Windows)用フリーゲームとして配信されている。

あそべるのは、よるだけです。ことばもわかりません。

内容は探索に重点を置いたロールプレイングゲーム。

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ある所に「ヨル」と「オセ」の双子の兄弟がいた。
ここ最近、兄の「ヨル」は毎晩、外へと虚ろな目で出かけて行ってしまうようになった。
そんな兄を心配した弟の「オセ」は、その後を追いかける。

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兄を追いかけた先に待っていたのは、異様な景色が広がる地下世界だった。辿り着いて間もなく、兄が奥へと進んでいく姿を目にしたオセは、引き続きその後を追う……というのが、物語のあらましだ。

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本編は横にスクロールするマップを進み、何かに導かれるように地下世界の奥へ向かう兄を追いかける形で進む。ただし、行く先々には様々な障害が待ち受けており、それらを潜り抜けたり、時にはオセに襲い掛かる敵と戦ったりしていくことになる。

更に本作はタイトルの通り、”夜だけ”しかプレイできない。ゲーム側に制限がかけられていて、午後21時から午前3時以外にゲームを進めることができないのだ。一応、ゲーム本体の起動はできるが、最初から遊ぶ、途中から遊ぶのどれを選択しても本編をプレイすることはできない。特殊なメッセージが表示される、主人公が就寝中の姿が映し出されるだけとなる。

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まさに名は体を表すがごとく。あまりにも革新的な仕掛けとなっている。

更に続けて、本作では台詞、インターフェース周りのテキストが日本語、外国語ですらない、独自言語で記述されている。なので登場人物の会話、インターフェースの表示共に何を言っているのか、何が書いているのかを理解することができない。

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一応、各文字は日本語の五十音順に基づいて関連付けられているほか、ヒントも散りばめられているので、それを見出せば分かるようになっている。だが、根気が求められるのは言うまでもなく。紙とペン無しでは、ほとんど不可能に等しいほどだ。

とは言え、言語を理解していないと分からないのはストーリーだけ。ゲームを進めるだけなら、理解する必要は無い。ただ、どうしてこんな展開になったのかが分からず進むので、モヤモヤとした気持ちにさせられる。特に行く先で出会う敵が襲い掛かってきたり、寄り添ってくるのか分からないのは、不気味さすらある。

この二つの特色だけでも、本作が特異なRPGであることは容易に察せるだろう。夜しか遊べない上に、ストーリーも言語の法則を解読しないと分からない。プレイすれば誰もが「なにこれ…」と、困惑すること間違いなしの作りになっているのだ。

ふしぎなちかのせかいです。でも、こわくはないんだよ。

夜だけしかプレイできないだけあって、世界観もそれ相応に不気味。

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イメージ的には深海をモチーフにしていて、背景には海洋生物が行き来しているのだが、いずれも概念的な存在のように描かれているのに加え、図書館、街、森など、海の中に不釣り合いなロケーションが広がる。

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オセの行く手に現れる、住民達の姿も異様だ。序盤に出会う白い大蛇は序の口。更にその先に進むと、継ぎ接ぎだらけの店の主、二人の人間を合体させたかのような”何か”が登場し、世界の歪さが露わになっていく。

詳細はプレイしてからのお楽しみということで伏せるが、料理店の光景とそこで出会う住民は非常にショッキングだ。人によっては、背筋が凍る恐怖を覚えるだろう。

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ドット絵で描写されたグラフィックも世界観の不気味さを絶妙に表現しており、「いけない世界に迷い込んでしまった」という気持ちを高める。住民と出会って間もなく戦闘が発生することを始め、唐突な展開と演出が多々用意されていることも、一刻も早く兄を見つけ、この世界から抜け出したいとの焦燥感を煽り立てる。

このように心地よさなど何一つない夢をモチーフとした雰囲気作りが徹底されている。特に居心地悪さは圧巻で、実際に現実生活で見る夢に近い生々しさが滲み出ている。
ゲームのみならず、アニメ、漫画などで登場人物達が見る夢というのは、基本的に言葉通りに楽し気な世界として描写されがちである。しかしながら、実際に睡眠時に見るのはいいものばかりではない。時には現実に起きて欲しくない光景が広がる、恐ろしい夢を見せつけられたりもする。筆者も風邪を引いて熱を出すと、決まって自らが手打ちうどんにされる、地獄のような夢を今も昔も見せられる。

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そう言った夢の現実、或いは暗黒面を体感させるかのような世界観だけあって、インパクトは絶大。それも、夜にしか体験できないという制限付き。これがどれほど強烈な印象を残すものなのかは語るまでも無いだろう。

だが、先述の独自言語の法則を見出すと、実はそんな世界ではないという、意外な真実が明らかに。特にイベントが発生する住民達の会話は驚きの連続で、第一印象が根底から覆されるのだ。

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どのような内容なのかはぜひ、言語の法則を見出して自ら解き明かして頂きたい。そして、印象の逆転に身を委ねて欲しい。人によっては、もっとこの世界に入り浸りたい気持ちにさせられるかもしれない。

きょうも21じをまちます。おやすみなさい。

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紹介が遅れたが、本作は行く先々で戦闘も発生。システム周りはコマンド選択型だが、基本的に一対一で相手に語りかけ、ハートゲージを満タンにすれば勝利という、一風変わったものになっている。更にレベルの概念はないほか、こちらの体力はハートの数で示され、受けたダメージは戦闘終了後に回復、別途回復手段は限定されているなどの特徴的な仕様がある。極めつけに戦闘で敗北すると……これ以上は実際に体験して確かめて頂きたい。

ボリュームはエンディングまでなら大体1時間ほどで辿り着ける。難易度もそれ相応に控え目にされているが、体力管理と探索によるアイテムの獲得次第で上下。また、エンディングも二種類用意されていて、全てを見る場合はより入念な探索が求められるので、やり応えも増す。

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他にマップの構造、謎解きにちなんだ仕掛けもシンプルながら個性に富んでいて、特に後者は終盤にて、独自言語を採用したなりの推理力が問われる展開を楽しめること請け合いだ。

居心地の悪い世界観を表現するため、意図的に快適性を犠牲にしているところもあり、主にメッセージ送りの遅さ、先述では伏せた戦闘敗北後の仕様にはストレスを感じるかもしれないが、それも含めて唯一無二の体験を提供する作品に完成されている

この新鮮なプレイ感は本作でしか味わえないものがあるので、興味のある方はぜひ、プレイしてみて欲しい。言葉通りの「夜だけにしか遊べないRPG」にして、類まれなセンスに満ち溢れた逸品だ。ただし繰り返しになるが、本作がプレイできるのは午後21時から午前3時まで。プレイする際は、体調が万全である時に留めるようにしましょう。

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それでは、良き夜のひとときを。

[基本情報]
タイトル:『ヨルダケ』
制作者: じゃむさんっぽいど
クリア時間: 1~2時間
難易度:初級~上級者向け
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料
備考:出血、ホラー描写あり(※推奨年齢:12歳以上)

ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/18573

長編フリゲRPG『デイドリームリバー』。一つの凄惨な事件を機に幕を上げる、恐怖と混沌の宴。

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石川県金沢市「香林(こうりん)中学校」。
夏休みを間近に控えたこの学校である朝、一人の男子生徒の死体が発見された。

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学校中が騒然となる中、死亡した生徒と同じ学年の籏崎健斗(はたざきけんと)、伊沢京介(いさわきょうすけ)は前日の深夜、彼から電話がかかってきていたことに気付いた。留守番電話を再生すると、そこには彼が死に至るまでの様子を生々しく伝える音声が残されていた。只ならぬ気配を感じた二人は、部活動の先輩である岡梨優也(おかなしゆうや)の協力も得て、深夜に学校へと忍び込む。そこで彼らを待っていたものとは…。

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『デイドリームリバー』は2018年11月23日にフリーゲーム配信サイト「ふりーむ!」にてリリースされた、Windows用長編ロールプレイングゲーム。作者は「莞爾の草(かんじのくさ)」氏。「RPGツクールVX Ace」で制作された作品であり、プレイに当たっては同ツールの専用RTPのインストールが必須となる。(ダウンロードはこちらから)

真夜中の学校を舞台に繰り広げられる学園ホラーRPG…?

本作は男子生徒の死の真相を明らかにするため、真夜中の学校を探索していく。ホラーアドベンチャーっぽくあるが、内容はRPG。マップを歩むと敵との戦闘がランダムで発生し、勝利すれば経験値が入り、一定量に達するとキャラクターのレベルが上がって強くなる、純然たる作りになっている。

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なので、探索中に”なにか”が襲い掛かってきても、戦闘を通して退けられる。しかも、本作の登場人物達は皆、炎、氷、雷などを自在に操る超能力を”当たり前のように”所持。特定の人物に至っては、傷を治す回復の能力も持ち合わせている。

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また、戦闘に勝利すると経験値とは別に「パッシブポイント」なるものも獲得。メニュー画面にある「パッシブ」で、特定のステータスを底上げしたり、耐性を備え付ける「パッシブスキル」との交換ができ、個々のキャラクターの強化も図れる。

ここまでの説明で、心の奥底から言いたくなったと思われる。

どんな世界観だ、と。

そして、超能力が使える者達が探索するなら、あまり怖くなさそうとも思うかもしれない。

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だが、実際はその逆。登場人物達が万能な力を持つ分、太刀打ちできない”なにか”が次々と襲い掛かっては、プレイヤーを恐怖へと陥れていく。

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不意にドキッとさせる仕掛け、出血・身体欠損を始めとする残酷な表現も豊富。特に後者は鮮烈で、”なにか”によって登場人物が見るも無残な姿にされる様子が、一枚絵の演出と共に克明に描かれる。劇画調で歪みも表現されたキャラクターデザインも、それらのシーンをより不気味且つ、印象深いものにしていて、嫌でも目に焼き付いてしまうインパクトに満ちている。

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当然ながら、戦闘を通しても退けられない”なにか”も存在。
そのような者から逃げなければならない展開も発生する。

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極めつけで謎解きにも、手順を間違えれば、恐るべき事態へと至るものが。

RPGらしい仕組みの数々から、舞台設定から連想される怖さは薄そうも思うかもしれない。だが、実際は薄いどころか濃い目。例え退ける力を持っていようが、人でない存在に歯向かうのは容易ではないことを痛感させられる、独特な体験が得られる内容になっている。

そして面白いのが、ここまでのパートが全体の一部でしかないことだ。

混沌の様相を呈する濃厚なストーリー。

実は本作、狭い空間を舞台にした、ホラー系RPGではない。
あるタイミングを境に真夜中の学校の探索が終わりを迎え、以降は街中などの広範囲が舞台となる、ジュブナイル系RPGへと一変するのである。

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同時にストーリーも思わぬ方向へと進んでいく。少しネタバレすると、学校探索が終わりに差し掛かる頃、ある大きな事件が起きる。しかも、その事件には一見、無関係に見える男子生徒の死、真夜中の学校でうごめく”なにか”も絡んでいることが示される。登場人物達は一連の出来事の関係を明かすため、街中などで調査を繰り広げていき、やがては巨大な陰謀の渦へと巻き込まれていくことになるのだ。

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そのようになって以降のストーリー展開たるや、真夜中の学校探索が小さく見えてしまう程度にスケールが大きい。しかも親と子、いじめ、共依存、現世と常世、資本主義と共産主義などのテーマも入り混じって、複雑な様相を呈してくる

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▲折り返し点に来る度、歴史上の人物が遺した名言が表示されたりも。

それでいて驚くべきは、これほど複雑な内容になろうとも、ストーリー全体の勢いが落ちないどころか、加速すること。各々のテーマの掘り下げが浅くなったり、語りすぎて中だるみすることもなく、テンポ良く繰り広げられていくのである。

沢山のテーマを盛り込んだストーリーというのは得てして破綻を招きやすい。また、一部のテーマが掘り下げられる反面、残りが浅くなる弊害も生じる。本作はそのようなことがほとんど起きることがなく、最後の最後まで全てのテーマにまつわるイベントがバランスよく展開。プレイヤーをくぎ付けにし続けるのだ。圧巻としか言い様がない。

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構成も素晴らしく、二転三転する事態が矢継ぎ早に発生するので、(いい意味で)止め時が作りにくい。それどころか、全てが終わったと思われた後にも驚愕の展開が。そこから予想だにしない結末へと行き着く流れも、唖然となってしまうインパクトがある。

勢いを重視したあまり、登場人物達が当たり前のように超能力が使える設定の解説タイミングが遅く、序盤は世界観に入り込みにくい、雰囲気の緩和を意図して入れたとされるギャグが余計に感じてしまうなどの難点もある。
また、これは苦手なプレイヤーへの配慮を踏まえ、あえてネタバレするが、本作はハッピーエンドとはならない。非常に心苦しい締めとなる。先の通り、ホラー演出も容赦なく、あるタイミングで克明に描かれるいじめの表現も、苦手な人なら胸糞必至だ

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しかしながら、中だるみがほとんどないこと、綺麗ごとで終わらせず、ご都合主義にも逃げずに描き切った作りは素直に引き込まれるものがある。

RPGにはシステム以上に記憶に残る濃厚なストーリーを。それを求めるプレイヤーなら、本作が要プレイの作品であるのは、言うまでもないだろう。

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かと言って、マップやシステムの作りも甘くない。特に前者は謎解きあり、チームに分かれての探索ありなど、工夫を凝らした作りになっていて飽きさせない。あるマップに至っては、戦闘の発生がランダムから、敵との接触(シンボル式)へと変わるという、システム的に凝った仕掛けまで用意されているぐらいだ。

ボリュームもメインストーリーだけでも15時間以上と盛り沢山。寄り道のサブクエストも用意されていて、それらの攻略も含めれば30時間は超過する。

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どうしてもストーリーの濃さに目が行ってしまうが、ちゃんとストーリー以外を求めるプレイヤーの欲求にも応えてくれる。ただ、どちらが最も魅力的かと言われれば、圧倒的にストーリー。それほどまでに濃い。強烈な印象を残すものになっているのだ。いい加減、しつこく感じてしまうかもしれないが、実際にプレイすれば、何度も繰り返す理由がきっと分かるだろう。

まさに混沌の宴。白昼夢のごときストーリーの結末を見届けるべし。

難易度はレベルを上げての力押しが効く部分のあることから低め。ストーリー展開の都合でチーム分け、単独行動を強いられる場面も頻繁にあり、回復アイテムをどれだけ持っているかで難しさが大きく上下する部分もある。さすがに行き詰まるほどの難しさはないものの、縛りを強調した調整は好みが分かれるかもしれない。

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戦闘システムも王道のコマンド選択型ながら、ターンごとに参加メンバー、装備の変更を自由に実施できるなど、戦略の立て直しがしやすい作りになっているのがユニーク。リング状のコマンドインターフェース、強力な技を仕掛けた際のカットインなど、デザイン面でも独自の工夫が満載。キャラクターも特定のステータスが際立って高いなど、分かりやすい個性付けが図られていて、状況に応じて最適なメンバーを考えて実行に移す楽しさがある。

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全体的にホラー、残酷な表現が豊富にあるため、人を選ぶ作風ではある。そのことから12歳以上対象の推奨年齢が設定されているが、筆者の主観では17歳以上対象が相応しいのでは、と思う。やや演出過剰なところもあり、中でもフレームレートが落ちるマップ移動中の拡大表現は余計に感じてしまう。

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そんな粗さも目立つ出来ではあるが、終始、勢いを保ち続ける濃厚なストーリー、起伏に富んだマップで楽しませてくれる本作。まさに怪作というに相応しい一本だ。この「混沌の宴」と言うに他ないストーリーに身を委ねてみよう。
きっとそれは、あらゆる意味で忘れられない体験として残る……はず。

[基本情報]
タイトル:『デイドリームリバー』
制作者: 莞爾の草(かんじのくさ)
クリア時間: 15~20時間(※サブクエスト攻略込み:35~40時間)
難易度:初級~上級者向け
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料
備考:ホラー、出血・暴力表現あり(推奨年齢:12歳以上)※筆者の主観では17歳以上推奨

ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/18952

JRPGの王道ここにあり!コンシューマ級の遊び応えと練り込まれたプレイアビリティを誇る長編大作『アスクギア』

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コンシューマRPGのメインストリームがフル3Dのアクション型に寄っていく中、個人制作のRPGでは2Dのコマンド型が現在でも大きな存在感を示している。独自のシステムや2Dならではのグラフィック表現に凝った作品、制作期間をかけた長編作品なども生まれ続けているジャンルだ。

今回紹介する同人RPG『アスクギア』もそうした作品のひとつ。システムの完成度やフィールドマップの作り込み、漫画家のスバルイチ氏が手がけるキャラクターグラフィック、クリアまで想定プレイ時間30~40時間というボリュームなど、総じてプレイステーション1~2時代のコンシューマRPGに匹敵する作品に仕上がっている。

その一方で、プレイが冗長にならないようテンポやユーザビリティは現代的に整えられており、長編RPGとして中だるみせず最後まで熱中してプレイすることが可能。本記事ではそうしたプレイフィールを支える要素を中心に紹介していきたい。

ボーイ・ミーツ・ガールから始まり世界の真実へと至る“ド直球RPG”

本作の舞台は、扱う者に智慧と力を与えるという先史文明期のデバイス「アスクギア」の恩恵によって発展を遂げている国エリルミア。物語はある目的のためエリルミアを旅する少年ユアと、彼に「先生」と呼ばれる女性メモリアが、ある遺跡の最深部で眠っていた少女ミイナと出逢うことから始まる。

彼女のもつ不思議な力により、本来は先天的にアスクギアを扱うことができなかったユアがアスクギアの使い手「交信者コネクター」として覚醒。そしてこの出逢いをきっかけにユア達はミイナを狙う組織との戦いに身を投じることになり、やがてアスクギアやエリルミアそのものの謎へと迫っていく。

ボーイ・ミーツ・ガールから始まりスケールを増していくシナリオ、ファンタジーをベースとしつつSF的な要素も端々から覗く世界観、数々の出逢いと徐々に増えていく仲間達……などなど、いわゆるJRPGにおける王道を感じさせる内容だ。制作コンセプトとして“ド直球RPG”が掲げられており、物語もバトルもストレートに熱い展開が繰り広げられる。

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ミイナの力により、ユアは本来は扱えないはずだったアスクギアの使い手として覚醒。メモリアを助けるため、そしてミイナを守るためにその力を振るっていく

“シチュエーションの多様化”により最後まで飽きさせないバトル

長編作品というのは、ある意味「飽き」との戦いである。RPGでプレイ時間の多くを占める戦闘においては新しいシステムの解放や、キャラクターやスキルといった要素の追加で変化を出していくというアプローチもあるが、数十時間級のゲームでシステムや要素を延々と増やしていくと、プレイヤーが処理できるキャパシティを越えてしまいかねない。

そこを絶妙にバランス取りしつつ多くの要素を使いこなす楽しみを追究した名作もあるが、本作はプレイヤーキャラクターが最大6人で各キャラクターが戦闘時に使うスキルの数もそれぞれ一桁程度と、プレイヤーが扱う戦闘の要素自体は比較的シンプル。その上で、敵が持つユニークな特殊能力の数々により、多様な戦闘シチュエーションを生み出すというアプローチを取っているのが大きな特徴だ。

ある特殊能力を持つ敵と最初に遭遇した際には解説が表示され、以後も戦闘中に解説を参照することが可能。本作独特の特殊能力も多いが、じっくり内容を把握しながら戦っていくことができる。戦闘時に操作するメンバーは3人で、パーティが4人以上の場合は控えと交代しながら戦う仕組み。物理アタッカーに魔力アタッカー、デバッファー、盾役といった役割が明確なメンバーの連携でさまざまな状況を切り抜けていく。

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敵の数に応じて攻撃力や魔力が倍増するというユニークかつ恐ろしい特殊能力「大軍」。一見無茶だが実際に戦ってみると絶妙にバランスが取れているのも見事だ

もちろん独自のシステムも充実。基本は敵味方が入り交じって順次行動するCTB方式だが、特徴的なのは攻撃における属性の扱いだ。攻撃スキルには炎・水・風の属性が設定されており、敵には弱点や耐性が設定されている。ここまではオーソドックスだが、「なら弱点属性で集中攻撃すればいいじゃん」とはならない仕掛けが用意されている。それが「EAの蓄積と解放」だ。

属性攻撃を仕掛けると、与えたダメージの半分に相当する量の「EA」という値が敵に蓄積される。そして3属性のEAが溜まったあとにさらに属性攻撃を仕掛けると「EA解放」となり、蓄積したEA分のダメージが上乗せされる仕組み。EAが通常より多く溜まるスキルや特殊能力によりEAの溜まりやすさが通常と違う敵、EA解放を行うことで状態変化を起こす敵なども居て、本作の戦術の要となっている。属性は基本的にキャラクターと対応しているため、パーティ編成の戦略もポイントだ。

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戦術の要となるEA。解放時は一気に大ダメージを出せるのが気持ちいい

もう一つ特徴的なシステムが「アクセラレイト」。戦闘中、攻撃を行うことで減少していく「FP」という値が0になると発動待機状態となり、この状態で攻撃を行うと自動で発動する。発動中は発動したキャラクターの攻撃力が上昇するほか、あらかじめセットした複数の効果が発生する。この効果はダンジョン等で入手できる「ネコバッジ」によりカスタマイズでき、強力な効果ほどFPの初期値が増加してアクセラレイトは起こしにくくなるという仕組み。とはいえFPの初期値に応じて上昇する攻撃力も増えるため、発動しやすくするか、強力な効果を得るかといったカスタマイズも練り甲斐がある。

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アクセラレイト発動時に発生する効果は複数のものを組み合わせてカスタマイズ可能

さらにアクセラレイト発動中に1回だけ、任意のタイミングで敵の行動に割り込む「ディレクト」を使用可能。行動する直前の敵に割り込みをかけて攻撃すると行動を1回分遅らせることができ、さらにそこで追い打ちをかけるとクリティカルとなりダメージが増加と、使いこなせば非常に強力なシステムだ。

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左の敵の攻撃中にディレクトを発動することで右の敵の行動に割り込みをかけた場面。このまま右の敵を攻撃すれば行動を1回分遅らせることができる

こうしたシステムを駆使して、ユニークな強敵の数々と戦っていくのが本作の醍醐味。ポイントはEA解放、アクセラレイトともに意識せずとも自動で発動することで、ガチガチに戦術を詰めなくても自然と大ダメージを出せたりチャンスがやってきたりと戦闘状況に緩急がつく。その上で、タイミングを調整したりディレクトを活用したりと自分なりの立ち回りを考えるのも面白い。スキルも数が多くないぶん一つ一つが特徴的でスキル同士のシナジーなどもあり、間口は広く、突き詰めると奥深いバトルであると言えるだろう。

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アクセラレイト中は「EXスキル」を発動することも可能。ゲーム中盤以降に習得できる各キャラの奥義と言えるもので、使用するとアクセラレイトが即座に終了する代わりに高い威力や唯一無二の追加効果を持つ。発動時のカットインも見どころ

“RPG哲学”を感じる練り込まれたプレイアビリティ

長編RPGのプレイにおいて、煩雑になりがちなルーチンワークを極力廃しているのも本作の特徴だ。例えば回復などの消費アイテムについて基本的なものはアイテム支給制を採用しており、街などの支給スポットで残り個数に関わらず決まった数まで補充できる。細々としたアイテムの残数に気を遣う必要がなく、また支給数はそれほど多くないためダンジョンではリソース管理の戦略が生まれてくる。

ダンジョンでのエンカウントの仕組みも独特だ。本作はシンボルエンカウント方式で、ザコ敵のシンボルが停止し接触判定がなくなる「エンカウントキャンセル」を一定時間発動可能。その一方でもし敵シンボルと接触し戦闘が始まった場合は基本的に逃走は不可能となっている。

逃走不可能というと一見ストレスフルに感じるかもしれないが、エンカウントを避ける手段が十分に用意された上であれば「捕まった時くらいは戦うか」と納得もいくというもの。世の中にはRPGでザコ戦をとことん避けて進むことに喜びを見出す人種が居るが(筆者もその一人である)、そんな人でも敵に捕まった時は戦っていくことで、ほどほどにレベルも上がっていく、といった具合だ。

さらに、ダンジョンにはシンボルの色と大きさでザコ敵とは区別される賞金首的なモンスターが居て、倒すと支給アイテムのグレードアップなどに使える「アルターパーツ」を入手できる。エンカウントシンボルの色と形で通常の敵とは区別されており、避けやすいザコと、積極的に戦うことにメリットがある強敵を織り交ぜることで、ダンジョン探索においてもプレイの緩急が意識されている印象だ。

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ザコ敵はエンカウントキャンセルも駆使して避けつつ賞金首的な強敵は狙っていくという、緩急のついたダンジョン探索を楽しめる

ほかにも、経験値やレベルは個別に存在せずパーティで一元化など、ちょっと珍しいがよく考えると確かに合理的と感じる仕様が散りばめられている。もちろん本作が採用した仕様が唯一の正解ではないが、確実に言えるのはコンセプトレベルから細部まで、「何となく」「慣習だから」で実装されていると感じる要素が全くないということだ。RPGのさまざまな要素を分析し、「自分ならこう作る」というRPG哲学のようなものが感じられる。

ボリュームと密度の両面で完成度の高い大作

ここまでシステム面を中心に紹介してきたが、キャラクターやシナリオも大きな見どころ。懐の広い風流人でありつつ指揮官としての強かさも併せ持つ姫騎士エスティアなど、立ち位置も抱える想いも異なる6人のキャラクター達がある重大局面に向けて集結していく展開が胸を打つ。数々の謎と伏線が集束して迎えるクライマックスも圧巻だ。戦闘時のSDキャラによるアニメーション、掛け声や勝利台詞といったボイスなど演出面も凝っており、ボリュームと密度の両面で完成度の高い作品となっている。

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エリルミア騎士団の副団長として陣頭指揮を執る姫騎士エスティア。国を護るというその想いとユア達の運命が交差していく

JRPGの名作の数々が生み出されたプレステ初期の長編作品に匹敵する遊び応えと、現代の作品らしい遊びやすさを兼ね備えた『アスクギア』。RPGが好きな人、とくに大作をじっくりプレイしたいという方に心からお勧めしたい作品だ。

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[基本情報]
タイトル:アスクギア
制作者:稲穂スタジオ
クリア時間:30~40時間ほど(公称)
対応OS:Windows
価格:ダウンロード販売 2,484円など(無料体験版あり)

『アスクギア』作品公式サイト
http://www.inahostudio.x0.com/askgear/

アスクギア

アスクギア(稲穂スタジオ)
遺跡の中に眠る少女と出逢いから始まる物語。市販RPG並みの大ボリュームの王道&激熱のド直球RPG!

趣向を凝らした戦闘システムと美しいビジュアルで紡がれる”波及する意志のRPG”『リアリティ×マインズ』

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俗に言う「TSF(TransSexual Ficition)」、異性への性転換を題材にしたフィクションの様式の一つである「入れ替わり」は、古くは児童文学から映画、漫画、アニメなど、エンターテインメント界隈においては根強い人気を誇る。

何故、この題材の人気は衰えないのか。それは異性の身体と生活習慣に対する戸惑い、その立場になることで見えてくる新たな世界など、登場人物達がいかなる反応を示すのかという興味と期待を抱かせる要素にあると思われる。また、入れ替わりを引き起こした真相を突き止める展開など、謎解きやサスペンスを楽しめる側面を持つのも大きいかもしれない。

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今回紹介する『リアリティ×マインズ』も「入れ替わり」を題材にした、PC(Windows)向け中編ロールプレイングゲーム(RPG)だ。『Elemental Field』シリーズ、『覚醒男女』など、これまでにもRPGツクールVX Ace製のRPG作品を多く輩出してきた露木佑太郎氏が制作(※本作では『RPGツクールMV』が用いられている)。2018年11月16日より、フリーゲーム配信サイト「ふりーむ!」にて公開されている。

個性的な戦闘システムを特徴としたストーリー主導型RPG

舞台となるのは「シエルカント・アース」と呼ばれる世界。王都「シエルカント」では、毎年決まった時期に新人兵士の採用試験を実施しているが、兵士でも倒すのに苦労する魔物が増加している関係で、志願者は減少傾向にあった。

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そんな王都の兵士になるべく、親友のユーディルと共に剣術を磨く男、アストレイク。いつものように近く森で特訓に励む二人だったが、そこに一人の少女が現れ、いわれなき襲撃を受ける。
突然の事態に対処できず、意識を失ってしまうアストレイク。
しばらくして目をさますと……

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なんと、先ほど自らを襲撃した少女の姿になっていた
どうやら、何かの衝撃で人格が入れ替わってしまったらしい。

では、アストレイク本人の中には……と、襲撃を受けた場所へと戻ると、間もなく王都の兵士たちが現れ、投獄されてしまう。この少女こと「シルヴァーナ」は昨今、ある村を無差別に焼き払う事件を起こしたことで指名手配されていたのだ。

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そして投獄の後、処刑が決定される。アストレイクはこの状況から脱するべく、兵士たちに嘆願する形で昨今、凶暴化している魔物を討伐する任務へと赴き、行方をくらました元の身体と、そこに宿ったとされるシルヴァーナを捜すことになる。
少し、序盤のネタバレを含ませていただいたが、あらすじはこのような形だ。

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本編は章仕立ての構成で展開。オープニングに当たる一章を除き、拠点に当たる「シエルカント城」で装備、アイテムの調達・管理などをして、「任務」と称されるストーリーイベントを受領して舞台となる場所へと赴き、遂行を目指す。

戦闘はマップ上の敵シンボルに接触すると発生。仕組みとしてはコマンド選択型の王道スタイルとなる。しかしながら、細かい部分に独特な味付けが施されている。

まず第一に成長周り。本作には経験値、レベルの概念が存在しない。代わりに「SP」なるポイント、「強化石」と言ったアイテムを用いて「スキル」を習得し、ステータスの強化を図っていく。

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スキル習得はメニュー画面の同名称の項目にて実施。全5つのカテゴリがあり、それぞれ習得したいスキルを選んで決めていく。ツリー方式で並んでいるので、一つ取るごとにその次に続くスキルが解禁され、さらなる強化を図れるようになる。

このスキル習得に必要な「SP」は、基本的に戦闘、マップ内の宝箱を開けることで入手できる。ただ、戦闘の場合は勝利するのではなく、「連携」を四回発生させねばならない

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連携は文字通りの合わせ技で、二つ目の特徴。戦闘コマンドの「救済」、「特技」いずれかのスキルを仲間に合わせて繋げて出すと発生。追加の攻撃、回復などを繰り出せるのだ。

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▲ボス戦では、勝利後にボーナスSPも手に入る。

これを四回発生させれば、戦闘終了後に「SP」が得られる。また、本作は雑魚敵の耐久力、攻撃力が気持ち高めに設定されている関係で、戦闘の早期決着、並びに態勢の安定には連携をどれほど発生できるかにかかってくる。

特に回復絡みの連携は極めて重要。というのも、本作には回復アイテムが存在しない。関連スキルはあるが、フィールドマップ上で使うコマンドは用意されていない。ゆえに戦闘中に
実施する形になるのだ。それもあって、迅速に回復したい場合は連携を発生させ、敵の攻撃による被害を受けても致命傷にならないところまで数値を上げなければならない。

そのため、状況を見据えたコマンドの選択が結果を左右する。とは言え、回復に関してはダンジョン内に全回復ポイントも置かれている。さらに戦闘難易度も選べるので、ストーリーだけを楽しみたいプレイヤーへの配慮も整っている。(※ちなみに全回復ポイントは最も簡単な「イージー」なら無限に使える。「ノーマル」以降は1回限り)

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ただ、一筋縄ではいかないバランスであることは大体、想像できるだろう。この他にもキャラクターごとの武器・防具は固定されていて、装備は補助効果を与えるアクセサリー以外切り替え不能(※ゲームが進むと武器・防具の強化システムが解禁)、序盤限定で主人公の体力が尽きた後、他のメンバーを「憑依」させてパワーアップ状態で復帰できるシステムがあるなど、個性的な試みが満載。

表向きこそストーリー主導型らしく、気軽に遊べそうな雰囲気だが、その実はシステムに凝った作り。いい意味で意表を突く内容になっている

戦闘システムも関係する、「意志」を題材にした芯の通ったストーリー

例によって、本作の魅力は戦闘システム。「連携」を意識した手を打ちつつ、パーティメンバーの体力に応じて攻守を切り替えるなど、コマンド選択型の取っ付きやすさと戦略を練る面白さが絶妙に絡み合ったバランスが光る。

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特に「連携」は多く発生させることがSP獲得に繋がるので、自然に色んな組み合わせと連続発生を狙いたくなる。戦闘が長引くほど、多くのSPを獲得できるチャンスになるのも、経験値やレベルと言った当たり前の要素がないからこそできた、粘りに粘って、それ相応の恩恵を得る快感と面白さに満ちている

何より、ストーリーを構成する要素の一つにもなっているのが秀逸。実はこの戦闘システム、ちょっとした”仕掛け”があり、終盤のストーリーに思わぬ形で関わってくるのだ。

詳細は件の場面を見てのお楽しみだが、戦術性を売りとするシステムで完結させようとしなかった、作者のこだわりを思い知らされること間違いなし。何気ない要素でプレイヤーの意表を突く卓越したセンスにも唸らされるはずだ。

ストーリー本編もタイトルに冠された「意志」を題材とした一貫性のある内容と、先の読めない展開の数々が強い印象を残す。特に主人公のアストレイクは、手配中の少女になってしまったがあまり、多くの受難に見舞われる。

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また、イベント中には選択肢が表示され、時に彼の感情を逆なでするものを選んでは葛藤する様子もたびたび描かれる。しかし、例え厳しい状況に陥り、負の感情が湧きあがろうとも、彼は自分なりの意志を示して行動していく。それによって、次第に彼を敵視していた兵士からの信頼を勝ち得、時にコンプレックスを持っていた仲間を成長させるきっかけを与えることになる展開の数々には、なかなか心打たれるものがある。

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そして、やがて訪れる行方知らずとなっていた本来の身体との対面。それ以降は一連の出来事を引き起こした犯人を巡る展開へと切り替わっていくのだが、そこにも「意志」を題材にした意外な展開が待っている

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中編ということで、エンディングまでは4~5時間程度と短めだが、終始、ブレのないテーマ性とこの設定あってこその展開の数々で唸らせるストーリーに完成されている。特に戦闘システムも絡む終盤の展開は、思わず唸る内容になっているので必見。本作が「波及する意志のRPG」を謳っている理由がよく分かるはずだ。

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また、本編の前日壇に当たるサブエピソード、エンディング後の主人公とヒロインが元の身体に戻った後のエピソードが用意されているのも大きな見所。特にエンディング後はそれ以外にも多くのイベントが用意されていて、もっと登場人物達の掛け合いを楽しみたいという欲求に応えてくれる。メインのみならず、サブ側も用意して世界観を掘り下げる。そんなサービス精神旺盛な要素も完備しているのにも驚かされるところである。

ストーリー派もシステム派もフォローする力作

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ここまでのスクリーンショットを見れば明らかだが、グラフィック、キャラクターデザイン(イラスト)、インターフェース周りの美しさも本作の魅力。イベントでは一枚絵(スチル)もよく挟まれるほか、戦闘においては「連携」などを発動させた際に掛け声ボイスとカットインも挿入されるなど、演出面も凝っている(※いずれもオプションでOFF設定に変更可能)。特に入れ替わりの設定が強く反映された主人公、ヒロインのボイスは要チェックである。

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全体的に高い完成度を誇る本作だが、戦闘システムに関してはスキルを駆使した戦いになりがちゆえ、通常攻撃を実施する「攻撃」コマンドが空気、ストーリーも主導型の体裁を取っている関係で、マップ探索の面白さは控え目という難点がある。本編外のサブイベントも時限式のものが多く、一度取り漏らしたら回収できなくなるシビアさがタマにキズだ。ただ、ヒント機能、引継ぎ有りの周回システムが実装されている。さらに全体のボリュームが控えめなので、やり直しがそれほど苦にならないのはせめてもの救いである。

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少し癖もあるが、意欲的な戦闘システムと一貫性のあるストーリーで楽しませてくれる本作。ストーリーだけを楽しむことにも対応した作りなので、見た目に惹かれただけの理由でプレイしても十分、期待に応えてくれること間違いなしの力作だ。システム派のプレイヤーにも見所満載、遊び応え申し分無しの仕上がりなのでぜひ。

最後に余談ながら、今後は本作のキャラクターイラストなどをまとめた画集の販売が計画されている模様。5月中の完成を目指しているとのことなので、興味のある方は作者・露木佑太郎氏のTwitterを要チェック!

[基本情報]
タイトル:『リアリティ×マインズ』
制作者: 露木佑太郎
クリア時間: 4~5時間(※エンディング後含む:7~9時間)
難易度:初級~上級者向け
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料

ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/18915


おじいさん剣士と孫のような女の子が秘宝求めて森を探検する、短編フリゲ”ポンポン”RPG『じじまごRPGmini』

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孫に当たる小さな子供と壮齢の大人が触れ合う光景は、見ているだけでも微笑ましいものがある。そのような関係性に着目した娯楽作品も少なからず存在し、一部は大きなヒットも記録している。中には双方が対立する様を描いた作品もあるが……それはさておき。

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今回紹介する『じじまごRPGmini』は、タイトル通りにおじいさんと孫の関係を題材にしたPC(Windows)向け短編フリゲRPGだ。

ただ、厳密には孫のような年齢の女の子、血縁関係皆無のおじいさん剣士が冒険するというものである。なんとも紛らわしいが、そういう設定なのだから仕方がないのです、どうしようもないのです、ということでご了承のほどを。

「千年樹の水」求めて、目指すは森の奥!

改めて主人公を紹介すると、孫……のような女の子は「マルナ」、おじいさん剣士は「ジャンズ」。少し前、王都「エイトワーズ」に「精霊鬼(せいれいき)」と呼ばれる魔物が現れる事件が起きた。その折に規格外の精霊術を操れるようになる「祝福の子」として覚醒したマルナ、精霊に因縁のあるジャンズの活躍によって、事件は一応の解決を迎えた。しかし、「祝福の子」に関する謎は残り、マルナの中にくすぶっていた。

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そんな中、「祝福の子」にまつわるアイテム、その名も「千年樹の水」を手に入れる依頼が二人に舞い込んだ。自らの力に関係する依頼に興味を持ったマルナは即決で依頼を受け、ジャンズと共に聖域と呼ばれる森の海への冒険へと向かう。

ストーリーのあらましはこのような感じである。
なんだか続編のような出だしだが、それもそのはず、本作は作者の鏡読み氏((偽)苅田町役所)が過去に制作した短編RPG『Sword of mind』、『Sword of mind -忌まれ咲きし花の姫-』に続く三作目という位置づけになっている

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▲『Sword of mind -忌まれ咲きし花の姫-』より。

先のタイトル画面のスクリーンショットで明らかだが、本作の正式名称も『じじまごRPGmini -Sword of mind 3.1-』と、前二作との関連が強く現れたものになっている。

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一応、作品としては独立しているので、本作から始めても支障はない
ただ、前二作の背景などが前提で語られる部分があるため、プレイしておくと、少し入りやすくなる。いずれの二作もフリーゲームで、短編ということでプレイ時間も短めに設定されているので(平均30分~1時間ほど)、できれば前提知識があった上で遊びたい……という場合は、先にそちらをプレイしておくのがお薦めだ。

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>sword of mind(ふりーむ!:作品紹介&ダウンロードページ)
>Sword of mind -忌まれ咲きし花の姫-(ふりーむ!:作品紹介&ダウンロードページ)
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改めて本作の内容を紹介すると、個性派の一言に尽きるRPG。システム周りに、大きな特徴を持った作りになっている。

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一つに移動及び探索。画面左側に表示される複数のマス目(フロア)で構成されたマップを方向キーを押しながら進んで、目的地への到達を目指す一風変わった仕組みになっている。

マップには現在位置などがアイコンとして表示。何らかのアイコンが表示されている所まで辿り着けば、アイテムが手に入ったり、次のマップへと進めたり、時にはストーリーイベントが発生する。基本的には「EV」と表示された会話イベント発生アイコンへの到達を繰り返しつつ、舞台となる森の最深部にあるとされる「千年樹の水」の元に辿り着くのが最終目標となる。

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当然ながら、探索中には敵との戦闘も発生。この戦闘も二つ目に当たる個性的な部分で、作りはオーソドックスなコマンド選択型ながら、前列にジャンズ、後列にマルナが位置して戦う形となる。

見ての通りに非力な孫を壮齢の大人が庇いつつ戦う感じだ。そのため、前列のジャンズが倒れ、後方のマルナが集中砲火を浴びぬよう、体力回復を図ったり、それぞれが持つ特技を最大限に駆使する戦術が重要となるバランスになっている。

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また、ジャンズもマルナも防御力は気持ち低め。主に現在のレベル以上の強さを誇る敵との戦闘では、一瞬で体力を奪われ、前列のジャンズが戦闘不能になることが頻発する。これを考慮してか、戦闘不能に陥ってからの復帰手段は簡単で、体力回復アイテムを与えるだけで戦闘へと戻れてしまう。裏を返せば、武器・防具の装備、育成のツメが甘いと、戦闘不能→復帰のループに陥りやすい。

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そのことからも、慎重な管理が試される調整だ。
しかし、全体的な難易度はそこまで高くはなく、全滅しても戦闘発生前のマップに戻れる良心的な仕様なのに加え、レベルを上げて強化するのを心がければ、力押しも通用する程度に控えめ。

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レベルとは別に強力な敵を倒した時に限り、「ステータスポイント」なるものも手に入り、メニュー画面の「ステータス」から、ポイントのある限り、好きなパラメータをプレイヤーの自由に底上げさせることもできる。これとレベルアップを組み合わせれば、そこそこ火力に秀でた性能にすることも夢ではない。

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さらにマップのどこでも「休憩」が可能。これをする度に体力のほか、特技の使用に用いる「SP」の回復も図れる。休憩中にも敵が現れるなど、油断ならない部分もあるのだが、弱い敵ならジャンズによる先制攻撃こと「Smash!!」が発生して、戦闘が早期決着するなど、手間をかけさせないための配慮も凝らされている。

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地図のようなマップを進むプレイスタイル、おじいさんと孫が主人公なりの”もろさ”など、独特な要素が満載だが、そのプレイ感は意外にお手軽。それでいて、相応の手応えも感じ取れるバランスを持つ、個性派の名に相応しいRPGに仕上げられている。

ハイテンポで起伏のある展開と……ポンポン?

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短編というのもあり、ゲーム全体のボリュームは控え目。エンディングまで要する時間は長くても1時間ほどだ。ゲームテンポも移動時はサクサク動いてくれるのみならず、高速化ボタンを押せばよりスピーディに展開。戦闘もジャンズとマルナ、敵共に目にも止まらぬ速さで攻撃を繰り広げるのもあって、全く持ってモタつくことがない。むしろ、あまりに早く動くのもあって、何が起きているのか状況を見極めるのに一苦労するほどである。

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そうも短く、スピーディとなると構成に起伏が無いのかと思いきや、全くそうであらず。特にマップは基本、最深部を目指して色んなエリアを進んで探索していくことが主となるが、途中、フロアごとの繋がりが分からないエリアが登場し、手探り感覚で次のマップに繋がる道を探す展開が挟まれたり、ボス戦が発生するなど、なかなか侮りがたい構成になっている。

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ある程度、奥地へと進むと隠しエリアも出てくる。当然、その先には相応の御褒美と”お仕置き”に等しい何かも。そこでしか手に入らないレアな装備も存在するので、全てを網羅しようとなれば結構な歯応えを堪能できる。少しばかりネタバレしてしまうが、ちゃんと探索をどこまで行ったかの記録がエンディング後に表示されるほか、プレイ時間も表示されるので、より効率的且つ、完全な攻略を目指した二周目以降のやり込みも楽しめる。

二周目に関連したところでは、ストーリーイベントで度々挟まれる選択肢も見所。本編のストーリーは一本道で、エンディングが分岐する仕掛けもないのだが、会話パターンが豊富に用意されていて、マルナとジャンズの様々なやり取りを楽しむことができる

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特筆すべきは、選択肢に必ずと言っていいほど付いてくる「頭をポンポンする」。これを選択すると文字通りの行動をジャンズが行ってくれる。そして、それを実施する度にマルナが相応の反応を見せる。

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これが何とも言い様がない面白さがあり、ついそれ見たさに選びたくなる。しかもこちら、ストーリー中、シリアスな場面でも普通に出てくるという徹底ぶり。作者のこだわりが現れている。

さらにこの「ポンポン」には驚くべき隠し要素が用意されているのだが……これに関しては本編で確かめて欲しいとだけ、言っておくとする。色んな意味でプレイヤーそれぞれの”性格”というものを見せつけられることになるはずだ。

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そして、きっと二周目で意地でもポンポンする執念が実ることだろう。
全てをやり遂げた後、貴方はきっと本作にこんなRPGだと言いたくなるはずだ。

じじまご”ポンポン”RPG、と。
(※注:多少、誇張表現が含まれます)

懐かしいグラフィックと音楽も光る、小粒な良作

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スクリーンショットの通りだが、本作はグラフィックにも凝っていて、任天堂の携帯ゲーム機『ゲームボーイ』の新作であることを強く意識したモノクロ調のドット絵で描かれたものになっている。中でもキャラクターのドットは素晴らしく、ちょこまかと動いたり、リアクションを見せたりする様には微笑ましい気持ちにさせられること請け合い。

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音楽も同様にゲームボーイを意識したチップチューンスタイルの懐かしさ溢れる楽曲で構成されている。音源的にはゲームボーイというよりも、その後継機の『ゲームボーイアドバンス』な感じで(※実際に音の数からしてゲームボーイではない)、同ハード風の音楽を求めると肩透かしを喰らうほか、こだわりのある人なら、後継機側で誕生した名作になぞらえて「異議あり!」とRボタンを押すかのような勢いで物申したくなるかもしれないが、曲は印象に残るものが多く、特に戦闘曲全般は珠玉の出来。要チェックだ。

ゲームシステム、全体の構成、グラフィックから音楽、演出に至るまで完成度が高く、短編RPGとしては申し分のない作品に完成されている。

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それだけにストーリーが作者の制作した過去二作の続きに当たる内容で、未プレイのプレイヤーが置いてきぼりにされやすい内容になってしまっているのが勿体ない。また、そのような設定である関係でエンディングも主要目的こそ達成するものの、一部の謎が語られない未完オチを迎えるため、消化不良感は否めない。

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独立した作品であれば……と、もどかしく感じてしまう部分があるが、手軽に遊べてやり込めるRPGをお求めなら、お薦めできる一本だ。特にシステム周りは興味深い作りをしているので、RPGにはストーリーよりもシステムを、という思いをお持ちであれば、ぜひ、プレイしてみて欲しい。
そして時々、孫……のような女の子をポンポンしてみよう。極めてみよう。

極めた末に何が得られるのかは……己の心に聞こう。

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▲ちなみに英語テキストにも対応しています。

[基本情報]
タイトル:『じじまごRPGmini』
制作者: (偽)苅田町役所(鏡読み)
クリア時間: 50分~1時間
難易度:初級~上級者向け
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料
備考:英語テキスト対応

※公式サイト
https://jijimagorpg.web.fc2.com/index.html

※ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/19321

まだ見ぬ地上と水を求めた、元女暗殺者と奴隷少女の挑戦の物語。硬派なフリゲローグライク『カクタスガール』

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地下に広がる都市「アンダウンタウン」。

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この世界は、99階層で構成されるダンジョン「地下塔」から採取される貴重な水資源を独占する「水道局」による圧制が敷かれていた。だが、いつしか水資源が枯渇し始め、局のアドバンテージは崩れつつあった。

そんな中、水道局が管理する「超自然教室」なる施設から一人の少女が逃げ出す。局員の調査により、逃亡後、少女が奴隷商に捕まったことが判明するも、彼らが違法な集団だったために出庫記録が存在せず、以降の足取りを掴めずに行き詰まっていた。

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同じ頃、件の奴隷商をせん滅する依頼を受けた一人の女暗殺者が単身、アジトへと潜入。数人の”処理”を果たした末、捕らえられた少女「サナ」を救出する。だが、サナはすぐにでも”終わる”ことを望んだ。彼女はこの世界で特に金のかかる病気「水を飲まなければ死ぬしかない病気」にかかっていたのだ。そして、その病気は暗殺者こと「キリエ」も患っていた。

不思議な縁を感じたキリエは、枯渇しつつある水資源の現状から、最後の賭けとしてサナと共に綺麗な水が存在するとされた地上を目指すことを決意。所属していた暗殺ギルドを辞め、忌々しき「地下塔」へと挑む。
果たして、その先に地上と綺麗な水は存在するのか。幻に終わるのか。

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このようなストーリーと共に始まる『カクタスガール』(作者:アブラノ氏)は、階層に踏み入れる度に構造が自動生成されるダンジョンを進み、アイテムや装備品を調達しながら最上階を目指すローグライクゲーム。2019年2月18日、Windows PC用フリーゲームとして、同ゲームの配信サイトである「ふりーむ!」にて公開された。

古典的なローグライクを元に構築されたゲームシステム

「ふりーむ!」の作品紹介ページ、本編チュートリアルでも解説されるが、本作の内容を端的に表せば『不思議のダンジョン』である。しかし、システム周りは同作とやや異なる。

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▲チュートリアルで『不思議”な”ダンジョン』と記されるが、正しくは『不思議”の”ダンジョン』なので(※”な”は派生作の名称)、この記事ではそれで通します。

一つに行動順序。ローグライクはプレイヤーが一歩動けば、相手(敵)も一歩動く「ターン制」のシステムが定番だ。本作もそれを採用しているが、「速度」が高いほど有利に立てる仕組み。プレイヤー側が勝れば二回連続で動け、敵が勝ればこちらは一回しか動けない、と言ったようにターン制の原則から外れる展開が生じるようになっている。

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二つにダンジョン構造。本作では階層に降り立った時点で、部屋と通路、階段の位置と言った全体像が判明する。そして、狭い。早々に探索を終えられる。階段にも一階層進む「青い階段」のほか、二階層分進む「赤い階段」、さらに同じく二色の「下り階段」が存在。一気に進むことも、引き下がることもできる。このため、進行テンポが早め。探索も一瞬の内に終えられるので、敵との戦闘、アイテム回収に時間を割かれやすい設計になっている。

三つにゲームオーバーによるペナルティ。例によって、本作もダンジョン内で体力が空になれば、それまでのレベル、獲得したアイテム全般が全てリセットされる。だが、難易度が選べ、簡単な「優しい」であれば、リセットを認めて拠点マップ(アンダウンタウン)へ戻るか、事前の記録から再開するかの二択ができる。

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反面、「難しい」では読み込めば消えてしまう中断セーブ及びロードしかできない、ローグライクの基本に準じた仕組み。いずれもバランスが全く異なるため、実質、二本分のローグライクが楽しめると言っても過言ではない作りをしている。しかも、難易度の変更はゲーム中、自由に行える。厳しいままで挑むも、優しくして安全策へ方針転換するのも思うがままなのも、本作の特徴の一つとなっている。

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他にダンジョン内では「ユニークモンスター」なる場違いなほど強い敵が現れる要素、階層ごとに「耐性」を付けているか否かで難しさが上下するなどの特徴がある。

ここまでの紹介で、古くからローグライクを嗜んでいるプレイヤーは察せた通り、本作は『Angband』に代表される、いわゆるband系と言われるタイプのローグライクになっている。厳密には本作の解説書(readme.txt)にも記されているのだが、『Angband』派生の『変愚蛮怒(へんぐばんど)』を元にしている。

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そのため、先に例に出した『不思議のダンジョン』をイメージしてプレイすると、細かな違いに戸惑うこと確実だ。難易度も低くない。「耐性」を付けているか否かで極端に上下するので、安易に力任せで突き進むと、ものすごい勢いで返り討ちにされる。さらに「優しい」に限れば、どこでもセーブできるのは詰みパターンが作られる可能性があることを意味する。それでも脱出用アイテムが……と言っても、件のアイテムは数ターン経過しないと効果を発揮しないので、その間に敵に襲われ、力尽きてしまえばアウト。

このことからも階層ごとに応じた戦略、攻め時と引き際の見極めが大きく問われる。そしてそこに、一歩動く度に値が1減り、0になると体力が減少し始め、回復せず放置すると力尽きてしまう「空腹度」こと「TP」の存在がのしかかってくる。

刻々と迫りくる、喉の渇きと水の枯渇の恐怖

本作における「TP」は「喉の渇き」を指す。そのことから明らかな通り、回復には「水」のアイテムを用いる。だが、ここで本記事冒頭で紹介しているストーリーを読み返して欲しい。舞台となる世界において、水は枯渇し始めている。

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つまり、貴重品(レアアイテム)。滅多に手に入らない代物なのだ。しかも、主人公は「水を飲まなければ死ぬ病気」を患っている。水を摂取しないと、体調悪化と共に攻撃力が下がってしまうのである。

絶対に水を飲まなければならない訳ではなく、「酒」でも回復は行える。だが、あくまでも回復だけで、攻撃力低下は防げない。しかも、酒を飲めば「混乱」の状態異常が付加。このため、混乱を防ぐ「酔い止め薬」なるアイテムを飲んだ上で摂取することが求められる。

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▲特殊能力こと「スキル」に混乱を防ぐ「狂耐性」があれば、薬を飲む必要はない。

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そして、追い討ちをかけるように水の枯渇は階層を潜る度に進行。最初は低い階層で取れたものが、段々と強敵揃いの高い階層でしか取れなくなっていく。一応、本編の進みに応じてなので、昇りすぎなければ低い階層で採取できるままでいられる。だが、高い階層にいけば強力な装備品が手に入るので、そのまま進まずにいるわけにもいかない。

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さらに水は貴重品ということで、店では高値で売れる。そうすることで高い装備品が買えるようになるが、代償として攻撃力低下が進行し、当面は厳しい戦いを強いられることに。
このような仕掛けがあるため、本編攻略に重くのしかかるシステムとなっている。

水と同じくらい装備品の入手も重要。先の通り「耐性」が備わっているか否かで大きく上下する難易度のため、それがあらかじめ備わった武器をいかに早く獲得できるかで、その後の難しさが変わる。大抵の耐性付き装備はダンジョン内で手に入るので、場合によっては敵を倒しやすい階層で延々と狩る(ハック&スラッシュに興じる)展開になったりも。

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だが、それに応じて水の枯渇も進み、攻撃力も下がるので、見極めが必要。こう言った制約が存在することからも、簡単なゲームではないのが察せるだろう。それが自由にセーブ可能な「優しい」でも共通なのであるから、推して察するべし。

その分、システムを完全に理解し、突破できた時の快感は格別。枯渇していく水もストーリーの背景と見事にリンクしていて、主人公達の切迫した状況を感じ取れるのも魅力的だ。

非常に癖が強いのは否定しないが、その分、悩みと楽しさを提供してくれる設計。こう言った要素も『不思議のダンジョン』とは言いがたい本作のローグライクとしての個性を現していて、一筋縄ではいかないやり応えに富んでいる。

この挑戦の果てに、求める”地上”と”水”はあるのか……?

戦闘も睡眠状態の敵を攻撃すると大ダメージを与えられる、暗殺者の主人公という設定を活かした「ステルスキル」の要素があり、いかにして相手を起こさずに近づくかを考える、独特な緊張感に富んでいるのが面白い。敵もユニーク種含めて膨大なほか、倒した敵が図鑑に記録される機能もあるので、積極的に倒しにいきたくなる。

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ストーリーも、病気を患った主人公一行が綺麗な水を求めて地上を目指す、分かりやすくもロマン溢れる内容が光る。圧制を敷く水道局、主人公との因縁を持つ別の暗殺者、そして謎の病気と関連した「超自然教室」なる謎の施設など、設定周りもユニークで、いずれも断片的にしか語られないのもあり、背景を考察したくなる魅力に富んでいる。PlayStation 2の”人を選ぶ傑作”として名高い『ブレスオブファイアV ドラゴンクォーター』のオマージュと思しきネタが見られるところにも、同作経験者ならニヤリとしてしまうはずだ。

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ただ、実はギャグ7割シリアス3割、茶番そこそこに加えて下ネタも満載な作風で、結構好みが分かれる。特に主人公のキリエは女性としてその台詞はどうなの、と言いたくなることを度々口走る。引いてしまう類の発言も多々あるので、少し覚悟が必要……かもしれない。

他に操作はキーボード前提で、ゲームパッドでは使えないボタンが沢山出てしまう難点も。元々想定していないためなのだが、ゲームパッドで遊びたいプレイヤーには、不便を感じるかもしれない。それとは別に、斜め左右上に方向を変えようとしたら移動してしまうなど、一部、疑問符の浮かぶ調整も引っかかる(※特にゲームパッド操作時において、このようなことが起こる)。難易度も特に中盤以降、速度ステータスの上下で極端に左右される難易度になっているのが引っかかるところだ。

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色々、硬派な作りのため、万人にお薦めできるものではない。だが、それ相応の凝ったシステムと難易度でたっぷり楽しませてくれる一本。ボリュームもエンディングを目指すだけでも25~35時間は余裕で費やすことになる密度に加え(※「難しい」なら、さらに増す)、登場する敵の全撃破、クエストと言ったやり込み要素も満載。腰を据えて楽しむローグライクをお求めであれば、要チェックの力作だ。深刻な病を抱えた女暗殺者と共に、幻の地上を目指そう。

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その道はあまりにも険しいが、辿り着いた時、相応の光景が目前に広がる……かどうかは挑戦してみてのお楽しみ。

[基本情報]
タイトル:『カクタスガール』
制作者: アブラノ
クリア時間: 25~35時間
難易度:上級者向け
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料

ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/19581

不思議で手ごわいファンタジー世界を冒険しよう。アクションRPGとシューティングが楽しめるお得な『フェアルーンコレクション』

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2017年3月に発売された任天堂の最新家庭用ゲーム機「Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)」では、発売から間もなく多種多様なインディーゲームが配信され、一部タイトルは、先行リリースした他機種版以上のセールスを記録すると言った景気のいい話が飛び出してきている。

完全新作でも、好調なセールスを達成しているタイトルは多い。中でも日本の個人ゲーム開発者が運営するインディゲームスタジオ「スキップモア」が開発し、フライハイワークスより販売されたアクションゲーム『神巫女 -カミコ-』は、全世界の販売総数が20万ダウンロードを記録するなど、名実共にNintendo Switchを象徴するインディーゲームとして、その名を歴史に刻んでいる。

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そんなスキップモアの処女作がPC、スマートフォンのほか、ニンテンドー3DS、PlayStation Vitaへの移植も実施され、続編も制作されるほどの好評を博したアクションRPG『フェアルーン』だ。今回紹介するNintendo Switch用ダウンロードソフト兼、Windows PCソフトの『フェアルーンコレクション』は、そんなシリーズ全作を一つのソフトにまとめたコレクションタイトル。

販売はニンテンドー3DS版に引き続き、フライハイワークス。開発は『ルディミカル 魔神少女音楽外伝』、『VOEZ(※Nintendo Switch版)』と言ったタイトルでフライハイワークスとタッグを組んでいる「エスカドラ」が担当。スキップモアは監修で参加している。

簡略化されたゲームシステムが特徴のアクションRPG

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本作のタイトル名でもある『フェアルーン』とは、舞台となる幻想が現実とされた世界の呼称だ。この地に呼び出された主人公の少女(ゆうしゃ)を操作し、「はじまりのしょ」と呼ばれる喋る本と共に、敵と戦闘したり、謎を解いたりしながら、魔王の魂が封印された像を探し出したり、行方をくらました妖精達を探し出す冒険を繰り広げていく。

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本シリーズの特徴は簡略化されたゲームシステムだ。アクションRPGを呼称しているが、その実はアクション要素控え目で、キャラクターを上下左右に動かしたり、メニュー画面を開いてアイテムを使う、簡単操作で遊べる作りになっている。

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特に象徴的なのは、フィールド上を動き回る敵との戦闘。プレイヤーこと主人公は剣を所持しているが、これを指定のボタンを押して振って、対象の敵に攻撃する必要は無い。単純にキャラクターをそのまま敵に接触させれば、瞬時に戦闘が行われる設計になっている。

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しかし、接触させればいい訳ではない。仮にプレイヤーのレベルが相手の敵より低ければ、ダメージを与えることはできず、逆に跳ね返され、ダメージを受けてしまう。レベルが対等な敵でも、倒した際の反動で軽微なダメージを受ける。倒しすぎれば、プレイヤーの体力が尽き、そのまま奈落行きである。なので、本作では相手とのレベル差を考慮しながら敵を攻撃し、経験値を稼いでレベルを上げ、脅威を減らしていくのが基本。仕組みは簡単ながら、独特な作りになっている。

また、本作では戦闘と並行してマップの探索と謎解きも展開。基本的にどこから攻略していけばいいのかと言った指示は僅かしか示されず、自力で攻略していくことが求められる。探索と並行してアイテムが手に入ることもあるが、その説明は最小限で、実際に使ってみないと効果が分からない手探り仕様。まさに古き良き時代のアクションRPGを踏襲した、プレイヤーの観察眼と試行錯誤する執念が要されるものになっている。

以上、簡単ではあるが『フェアルーン』の特色について紹介した。

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そんな本作には全部で四つの作品が収録されている。
シリーズ一作目でスマートフォンのほか、ニンテンドー3DSとPlayStation Vitaにも移植された『フェアルーン』、ニンテンドー3DS専用ソフトとして制作された『フェアルーン2』、そしてシリーズの原点でPCブラウザ用ゲームとして制作された『フェアルーンオリジン』。そして、本作初収録の完全新作タイトル『フェアルーンブラスト』だ。

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各作品の基本システム、構成は先の解説通りだ。
ただ、『フェアルーン2』では三つ+一つの異なるマップが用意され、それぞれボス戦的なイベントを設けるなど、大幅なボリュームアップが図られている。『フェアルーンオリジン』は対照的に短めの内容で、イベントや演出などが簡略化。アクションゲーム並のテンポで遊べる作りにまとめられている。

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そして最後の四本目『フェアルーンブラスト』は、何と縦スクロールのシューティングゲーム。四作品で唯一、完全な別のジャンルとなっている。
このブラストはゲーム開始当初にプレイできず、『フェアルーン』、『フェアルーン2』、『フェアルーンオリジン』の三作をクリアすることで解禁される

なので、完全新作を遊びたい目的で本作を遊ぶと、思わぬしっぺ返しを喰らう。しかし、いずれの三作もNintendo Switch、PCへの移植に伴って画面レイアウトの刷新、グラフィックの強化、音質の再調整、HD振動への対応などが行われ、同じ内容ながらも少し違う作りになっている。他機種版でプレイ済みの方も、新鮮な気持ちで楽しめること請け合いだ。

昔ながらの謎解きアクションRPGを意識した手ごわさ

作品ごとの魅力も様々。『フェアルーン』、『フェアルーン2』は簡単操作でアクションRPGが楽しめるゲームデザインが魅力で、特に謎解きの手強さは頭一つ抜けており、入り組んだ仕掛けとプレイヤーの観察眼が試される、やり応え抜群の冒険を楽しめる。

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良くも悪くも昔ながらの謎解きアクションRPGを意識した、凶悪さも見所。一見、何の変哲もない「すり抜けられる壁」に関連した謎解きがそれで、これに気付けないと長時間に渡ってゲームの進行が止まり、右往左往することになる。
現代では理不尽同然の仕掛けで、プレイ中には相応のストレスも感じさせられるのだが、このおかげで昔ながらのアクションRPGらしさが表現されている魅力もあり、当時のプレイヤーのノスタルジーを喚起させる、懐かしい体験が味わえるようになっている。

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それに過剰に不親切という訳ではない。よく見るとすり抜けられる壁には違いがあったりなど、よく観察すれば通れる場所と気付けるよう、グラフィックが調整されている。間違い探しレベルだったりはするが。

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これらの仕掛けを理解した後に挑む、周回プレイの時間を縮めていく楽しさも格別。本編ボリュームも二作共に10時間以内に区切りが着くようにまとめられているので、長々と凶悪な謎解きに悩まされる内容になっていない。ただ、『フェアルーン2』はボリュームアップが図られているため、プレイヤーによってはそれ以上の時間がかかる可能性もある。

ただ、アクションRPGの謎解きから戦闘までしっかり楽しめる密度の濃さは格別。続編は挑戦状的な難しさがあるため、初プレイには適してないが、初代は入門編としてこの上ない。もし、本作で初めてフェアルーンに触れるのなら、こちらから始めるのがおすすめだ。

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本作初収録の『フェアルーンオリジン』も良い。こちらは初見プレイ時ならば30分程度。慣れれば5分以内も行けるほどと、先の二作以上の短さとなっている。だが、短い内容ながらフェアルーン独特のゲームシステムは健在で、マップ上の仕掛け、謎解きも一定の密度があって、不思議と物足りなさは感じさせられない内容にまとめられている。

また、全ての始まりとも言える作品であり、簡略化された戦闘システムに手強い謎解きなどの要素がこの頃から残っていることも知れたりと、資料的な価値もある。セレクト画面では三番目に位置している作品だが、最初にプレイする作品としては初代に並ぶほどおすすめの作りになっているので、気になれば挑んでみて頂きたい。

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最後に紹介する四本目の『フェアルーンブラスト』は率直に言って、おまけだ。そもそも何故、シューティングゲームなのかという謎がシリーズ未プレイのプレイヤーには付きまとうだろう。これについてはフェアルーン、フェアルーン2の二作をクリアしてくれとしかコメントのしようがない。さすれば、理由が分かるはずだ。

肝心の内容も2分間にどれだけのスコアを叩き出せるかに挑む、スコアアタック特化型になっている。なので、これまたボリュームは少なめなのだが、限られた時間内にどこまで得点を伸ばせるかに挑むのは熱い。1980年代に一世を風靡したキャラバンシューティングに心を奪われた世代なら、鎮まっていたやり込み魂が覚醒すること間違いなしだ。

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更にこちらもオンラインランキングに対応していて、プレイヤー同士でスコアを競い合える。また自機は三種類あり、その内の二機は『神巫女』のキャラクターとなっている。同作には三人のキャラクターが居るのに何故、二人なのかという謎も付きまとうが、プレイすればその理由を察せる……かもしれない。いずれにせよ、要チェックだ。

お買い得感抜群のコレクションパッケージ

この他にもアクションRPG一辺倒な内容と思しき『フェアルーン』、『フェアルーン2』にはそれまでの印象を180度覆す賛否の分かれる展開が仕込まれていたり、続編では世界観に関する更なる掘り下げが行われると言った見所がある。

ニンテンドー3DS版から調整が入った箇所もあり、特に件の賛否分かれる展開は大分、攻略しやすくなっている。ニンテンドー3DS版をプレイして、そこで力尽くてしまったというプレイヤーにとってはリベンジチャンスとも言えるものになっているので必見だ。

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昔ながらのアクションRPGを目指したなりに、不親切さが残る作りなのは否定しない。しかし、そう言った粗いあってこその魅力があり、プレイすれば良くも悪くも印象に残り続けるゲームに完成されている。これからフェアルーンという作品を遊ぶに当たってはこれ以上なく最適な一本。これだけの内容でお値段も税込1000円とリーズナブル。Nintendo Switch、或いはPCをお持ちの方は是非、この不思議で手ごわいファンタジー世界に足を踏み入れてみよう。『神巫女』もあるとより楽しめるので、余裕があればセットでどうぞ。

[基本情報]
タイトル: 『フェアルーンコレクション』
制作者:スキップモア、エスカドラ(※販売:フライハイワークス)
クリア時間: 2~5時間(フェアルーン1)、4~10時間(フェアルーン2)、10~30分(フェアルーンオリジン)
難易度:初心者~中級者向け
対応OS: Nintendo Switch、PC(Windows)
価格: ¥1000

購入はこちらから
※Nintendo Switch版
https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000006183

※PC(Windows)版

勇者、絶対さ許さん!復讐してける!そげえ血が見てえなら見せちやる!ゴブリンねぶりなすな!ゲームブック風アドベンチャーRPG『ゴブガリ』

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ゴブリン。言わずと知れた、ヨーロッパの民間伝承に登場する伝説の生物で、邪悪な意志を持った小人。文献によっては意地悪な妖精などとも例えられ、主に剣と魔法のファンタジー世界を題材にした作品では、最弱モンスターの象徴とされる。

だが、独自の言語体系を持ち、部族社会を形成していたり、残忍な手口を好むなど、決して無力なほど弱い訳ではない。「小鬼」とも呼称される通り、その内面は鬼畜であり、決して弱いからと言って舐めてかかってはならぬモンスターなのである。

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そんなゴブリンを題材にしたゲームとして今回、『ゴブガリ』を紹介する。本作は2019年4月6日、フリーゲーム配信サイト「ふりーむ!」、「ノベルゲームコレクション」にて公開された、しげきんぐ氏制作によるPC(Windows、Mac)用アドベンチャーゲーム。後者のサイトで公開されていることから明らかだが、「ティラノスクリプト」で制作された作品で、ブラウザ版も用意されている。

勇者達の横暴を食い止めろ!RPG要素満載のアドベンチャーゲーム

昔、ある王国に魔物を退治する勇者がいた。

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そんな勇者の前に二匹のゴブリンが現れた。ゴブリンを狩る「ゴブリン狩り」に従事していた勇者は、連れである王国騎士一行が見守る中、瞬く間に二匹を一刀両断。そして、さらなるゴブリンを狩るべく、彼らが生活を営む村へと向かうのだった。

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そんな二匹のゴブリンが倒される模様を子供のゴブリン(以下、子ゴブリン)が見ていた。勇者に倒された二匹のゴブリンは、子ゴブリンの両親だったのだ!理不尽な形で親を失ってしまった子ゴブリンは、復讐を果たすため、そして村を守るため、無謀にも勇者とその一行と戦う決意をする。果たして、多勢に無勢なこの戦いは吉と出るのか、凶と出るのか……?

作品の名から、ゴブリンを狩ることが目的の内容を想像するかもしれないが、それをする勇者側は敵。主人公(プレイヤー)側はゴブリンで、彼らの横暴を阻止するため、行動していく物語となっている。

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ゲームはクリック操作主体のコマンド選択型アドベンチャー。舞台であるゴブリンの村のあちこちを移動し、怪しい場所を探索したり、敵である王国騎士達と戦ったりしながら、打倒勇者を目指す。

最大の特色はロールプレイングゲーム(RPG)の要素を取り入れたゲームシステム。騎士達と戦う下りから明らかだが本格的な戦闘イベントが用意されていて、単純に物語を読み進めることに終始しない作りになっている。

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詳細な仕組みも独特。まず装備。言うまでもなく、戦闘は武器、並びにアイテムを装備した上で挑むことが重要となる。丸腰で挑めばどんなことになるか?そんなの返り討ちに決まってるべ。

ただ、ゴブリンは初期段階はその丸腰状態。なので、村の貯蔵庫を始めとする、怪しげな場所を探索して入手、装備していく現地調達方式となる。

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だが、一度に持てる武器とアイテムは一つだけ。もし、探索中に別の武器、アイテムを手に入れた時は、装備しているものと交換して捨てることになる。一応、武器は捨てたとしても、入手したものが貯蔵庫にある箱の中へ記録される形で収納されるので、後から再回収可能。アイテムは武器と違って記録はされないが、手に入った場所を調べれば再入手できる。

ただ、本編ではイベント進行に当たって特定の組み合わせが必要になることが多々ある。そのため、必要に応じて交換し、戦闘を始めとする各種イベントに応じていくことが求められる。

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その戦闘も特徴的な作りだ。RPGのコマンド選択型ではなく、敵とプレイヤー両者の「レベル」と「攻撃力」が高い方が優先的に攻撃でき、低い方は反撃もできず一方的に殴られ続ける、数字勝負方式になっている。

しかも、攻撃を受けた側はダメージ量に応じてレベルも低下。受け続けるほど、先に攻撃を仕掛けた側が優勢になっていくのだ。また、必ずしも二つのステータスが高い方が攻撃できる訳ではない。基本、攻撃行動は確率計算によって決定されるので場合によっては敵が先手を打ち、気が付けばレベルを下げられて形勢逆転してしまうこともある。

言うまでもないが、下がったレベルは戦闘終了後もそのまま。回復はしない。なので、可能な限り高いレベルまで上げ、ダメージを受けても挽回できる程度の武器とアイテムを持って挑むことが重要だ。

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このように基本はコマンド選択型のアドベンチャーでありながら、随所でRPG的な戦略が求められる、不思議な遊び応えに満ちたゲームになっている。まるで「ゲームブック」のよう、と言われればまさにその通り。あれに近い遊び心地なのである。

ゴブリンの”ずる賢い発想”が勝敗を左右する

そして、ゲームバランスの味付けが面白い。
ゴブリン特有の”ずる賢い発想”がカギを握るものになっている。

特に戦闘システム、具体的にはレベルの仕組みと「移動」のコマンドがそれを演出。レベルは食料を食べたり、敵に勝利すれば自動的に上昇するようになっている。RPGお馴染みの経験値を一定値溜めて上昇させる仕組みではないので、関連する条件を達成すれば、サクサクと上がっていく。時には一気に5から10まで引き上がったりもするほどだ。

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だが、延々とレベルを上げ続けることはできない。というのも、戦闘を重ねる度に敵が強くなっていくようになっている。本編にはレベル上げに最適な、敵(王国騎士)の無限湧きポイントがあり、そこで戦闘を仕掛け、勝利を重ねればゴブリンを強くしていける……のだが。繰り返す度に敵が強くなり、ついには正規の方法で上げることすら無理なレベルにまで達し、強敵になってしまうのだ。

もちろん、どんなに装備を整えた所で、挑めばミンチだっぺ。食料で強化するもダメだ。一定以上のレベルより上にはなれない、上限が設定されているんだべさ。

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だが、そんな強敵と戦わねばならない時が来る。そもそも、勇者がそのような者だ。何せ、レベルが100。チート同然だ。勝てる訳がねえ、などと思ったかもしれない。

しかしながら、勝てるのだ。

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それを可能にするのがゴブリンの”ずる賢い発想”。彼らは罠を作る能力に長けており、村の特定ポイントに落石などの罠を仕掛けられる。そして、戦闘中に「移動」のコマンドを選び、罠を仕掛けたポイントに場所を移せば、それが発動して敵が強制的にダメージを受ける。反撃も発生せず、レベルが減少して戦況を有利にできるのだ。

移動には回数制限があり、罠も一度限りだが、逆に上手くやりくりし、罠も複数仕掛ければレベルの高い相手にも大ダメージを与えられ、数値の差を潰せる。それでゴブリンのレベルより下になれば大チャンス。積年の恨み晴らしちゃるのお時間だ!

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こんな”ズルい”戦術が用意されていて、強敵とも真っ向勝負ができるようになっている。そして、装備も適切であれば強敵も打ち倒せる。まさにゴブリンだからこそ許される戦いを演じられるのだ。このような作りをしているだけに、戦略が上手くハマった時の快感は格別。ゴブリンって楽しい奴ら、鬼畜って素敵だと、気持ちよさすらある唯一無二の手応えを得られるのだ。

同時にゴブリンの怖さも知れる。今なお、最弱モンスターの象徴とされるゴブリンだが、昨今は彼らの恐ろしさも描いた作品が登場し、注目を集めるようになっている。それらの作品でも罠で相手を貶め、群れで襲い掛かって凌辱したり、時には猛毒を塗った武器で再起不能にするなどの”ずる賢い発想”を駆使し、戦況を一変させてしまう様子が描かれている。

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本作のゴブリンはデザイン的には邪悪さはない、それどころか田舎言葉で喋る可愛いらしいキャラクター付けがされている。だが、戦いを重ねるにつれ、その内面が露わに。そして、彼らの真の実力は相手をハメ落とす知恵にある、と思い知らされるのだ。

最弱と謳われるゴブリンの真の実力に着目し、独特な戦術・戦略性を表現したこのバランス調整と設定は巧みの一言。最初は太刀打ちできなさそうと思えてた戦況が、どんどん有利になっていく過程もワクワクするものがあり、プレイヤーを引き付けて離さない魅力に秀でている。

特に中盤に差し掛かる辺り、騎士の軍勢と戦う場面が本作の真骨頂である。ぜひ、ゴブリンならではの戦略を駆使して彼らを倒してみて欲しい。本作のゲームバランスの興味深い作りにきっと唸らされるはずだ。

ゴブリンを舐めれば悪夢を見る。それを知れる珠玉の逸品

ボリュームは意外に短め。早ければ40~50分でクリアできる。しかし、常に戦略を練り、探索を繰り返しながらプレイしていくのもあって、物足りなさは感じさせない。また、エンディングも数種類用意されている。中には時限要素が絡むものもあって、それを達成するか否かでその後の結末も大きく変わるので、ぜひ、色んな可能性を探って挑んでみて欲しい。

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グラフィックもキャラクター達はフルカラー、背景は茶色主体というグラフィックのスタイルも印象的で、バックで流れる荘厳な楽曲も相まって、独自の雰囲気を作り上げている。ストーリーもアッサリしてはいるが、複数のエンディング、そして手短にまとまった台詞回しで楽しませてくれる。田舎言葉で喋るゴブリンが醸し出す愛くるしさも印象的だ。

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背景の色を統一している関係で、クリック対象がやや分かりにくかったり、戦闘も時々運が極度に現れて不利に陥るケースがあるのは少し気になるが、総合的には非常に高い完成度を誇る。ゴブリンを舐めてはいけない、そんな教訓を学べる珠玉の傑作だ。特にRPG好きにおすすめ。昨今、ゴブリンに対する認識が変わりつつある人もプレイしてみて欲しい。追い討ちの一手になるかもしれない。場合によっては、巷で有名なスレイヤーの人の助けを……呼ぶと、血の惨劇も甚だしいので止めましょうね。おらたち、平和主義者だべ。

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[基本情報]
タイトル:『ゴブガリ』
制作者: しげきんぐ
クリア時間: 40分~2時間(※エンディングのコンプリートを除く)
対応OS: PC(Windows、Mac)
価格: 無料

※ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/19870

※ノベルゲームコレクション(ブラウザ版)
https://novelgame.jp/games/show/1747

圧倒的ビジュアルで綴られる短篇アクションRPG『Atma』

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筆者が自主制作ゲームの世界を見つめ続ける中で、とみに感じているのが近年の学生制作作品の発展の目覚ましさだ。
それは過去には専門的な履修を要した技術や技法がより使いやすい形で浸透するとともに、頒布・販売網の拡大によって制作した作品を学校や学生たち自身の手によって世に送り出すことも出来るようになってきたことが背後にあると考えている。
そうした学生制作の作品のなかにあって、ひときわ印象を強める作品がこの度リリースされたので紹介したい。

『Atma』はフランスに籍を置くデジタルクリエイション専門学校Rubikaのゲーム部門Supinfogameの学生チーム「Team Atma」の制作による2DアクションRPG。2年時の課題として制作されており、2019年7月11日よりSTEAMおよびitch.ioにて無料でダウンロードできる。

生と死と愛と使命。その葛藤の狭間で

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ところは「目に見えるもの」と「目に見えざるもの」たちの満ちる世界。大きな力を持つアーティファクトによって世界の均衡がはかられており、Atma(アートマ)とShaya(シャヤ)のカップルは人と精霊とのバランスを保つ守り人として暮らしていた。

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仲睦まじいふたりだったが、ある日AtmaがアーティファクトのひとつであるUlja(ウルジャ)を調合しようとするも、事を急ごうとするあまりに事故を引き起こしてしまう。
そしてその失敗はかえって世界の調和を乱す要因となり、悪しき精霊が人の領域へと漏れ出してくると共に、Atmaは生と死の狭間に囚われの身となる。

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Shayaは想い人との再会と、守護者としての使命との合間で揺れ動き、己が心中を試される中、道を探るべくAtmaの記憶を辿りながら冒険を繰り広げることとなる。

圧倒的な”総天然色”ピクセルグラフィック

『Atma』を立ち上げてまず目を惹くのがそのグラフィックだ。インディーゲームの世界では多々見かけることのあるピクセルアートスタイルながらも、仏教文化を基としたエスニックな世界感が織りなす色使いは総天然色と形容したくなる鮮やかさに満ち溢れている。

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どこを切り取っても一切合切が美しいが、加えてアニメーションにも力が入れられている。とりわけ河の流れやそこから上がる水煙、神殿に貼られている水の揺らめきなど、「水」まわりの表現がこと細やかに描かれている。カエルの住む池に立つ緩やかな波を見た時にはそのこだわりぶりに畏敬の念を覚えたほどだ。

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プレイ中、つい足を止めて青紫の花々や小動物たち、川の流れに見入ってしまう。ただ景色を眺めて回るだけでも楽しめること請け合いだ。

真言を以て八苦を打ち砕け

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本作の主人公であるShayaは剣や銃のような身を護る為の武器の類は所持しておらず、その代わりに「マントラ」を唱える事で降りかかってくる苦難に対抗していく。

キーボード&マウス操作字はスペースキー、Xboxコントローラ使用時はBボタンでマントラ入力モードに移行し、マウスドラッグもしくはAボタン+左スティックで筆のエフェクトを走らせることができる。(コントローラ使用時、ゲーム画面上ではRTボタンの表記になっているがAボタンで反応する)

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基本となるのは「雷光」を発生させるマントラで、ドアや飛び石などに記されているマーカーを筆のエフェクトでなぞることで仕掛けを起動できるほか、襲ってくる敵に表示されているマーカーを線で結びつけることで電撃を放ち敵を撃退することができる。

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また、ゲームを進めることで「突風」を起こすマントラを入手でき、風車を回転させたり炎や毒霧を吹き飛ばすといった事が可能になる。マントラ発動時に走る梵字のエフェクトも相まり、「印を切る」かのようにマウスを走らせれば、さながら導師になったかのような気分が味わえる。

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これらのマントラを駆使した戦闘と謎解きはカプコン/クローバースタジオ『大神』に類似したシステムといえるが、Rubika校の『Atma』プロジェクト紹介ページにおいても『大神』の名前が上がっており、本作の発想の源泉のひとつになっていることが伺える。『大神』をご存知の方は比較しつつ楽しんでみるのもいいだろう。

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本作の難点としてはボリュームの少なさが挙げられる。ちょっとした分岐も存在しているが、アクションRPGのダンジョン1つ分程度のボリューム感でエンディングとなるため食い足りなさが残る。もっとShayaとしてこの鮮やかな世界を冒険してみたいと思わせることしきりである。
しかし短さを抜きにしても、高いセンスが発揮されている怒涛のビジュアルは、それだけでも『Atma』を体験するだけの価値があるものにしているといえるだろう。

[基本情報]
タイトル: Atma
制作者: Team Atma (Rubika Supinfogame)
クリア時間:  45分
対応OS: Windows
価格: 無料

↓ダウンロードはこちらから
(STEAM)

(itch.io)
https://atmagame.itch.io/atma

イレギュラーな異世界英雄譚を描くSRPG……の姿をした異色の一作『NAROUファンタジー』

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現実世界から別世界に送り込まれた少年少女、時々中年の男性が持ちうる力を発揮して悪と戦ったり、新たな人生を歩み始める様子などを描く、定番題材の「異世界転生」。もしくは「異世界転移」。

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今回紹介するフリーゲーム『NAROUファンタジー』もまた、それを題材としたシミュレーションRPG(以下、SRPG)である。そもそも「NAROU」……異世界を舞台にした作品が多く投稿され、賑わいを見せているユーザー参加型の小説投稿サイト「小説家になろう!」を連想させる名を冠している時点で、大体、そんな作品であるのが察せる。

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実際に本編も期待を裏切らない始まり方をする。
勇者大好きな巫女「ミーコ」によって、16歳の少年「篝矢 錬(かがりや れん)」が異世界へと召喚。何故か手にした不思議な剣を片手に魔物の軍勢と戦闘してこれを退け、その圧倒的な力を駆使して、人間を蹂躙する「魔神」から世界を救う冒険に出る。
これぞ異世界、そしてヒーローモノのお約束を踏まえたあらすじだ。

……と、大ウソ甚だしいことを書き殴らせていただいた。

何故かと言えば、本作は”イレギュラー”な作品であるからだ。
そもそも、ゲームジャンルにしたってSRPGではない。

戦わずに逃げろ!?戦術・戦略性皆無、初見殺し満載のSRPG?

いや、しかし、どう見てもスクリーンショットの一枚は……と、言いたくなるのも当然だ。
本作はSRPG専門のゲーム制作ツール「SRPG Studio」で作られている。

ゲームプレイもSRPGのそれだ。カーソルでユニットを掴んで動かし、敵に戦闘を仕掛けるなりして目標達成を目指す。敵と味方の順に行動する「ターン制」、敵を倒す度に手に入る経験値が100に達すればユニットが強くなる「レベルアップ」など、システム周りも同ジャンルの基本を踏襲している。

それでも本作はSRPGではない。
基本の枠組み以外のあらゆる部分が”イレギュラー”なのだ。

一つにユニット周り。SRPGは総勢30~50人以上に及ぶ個性豊かなキャラクターが仲間ユニットとして加入し、それぞれを戦況に応じて使い分けながら困難を潜り抜けたり、その成長に一喜一憂するのが醍醐味の一つだ。

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本作の場合、登場ユニットは30人にも満たない。10人いるかいないかの最少人数となっている。さらに、主力は主人公ほぼ一人。仲間もいるが、大抵は操作不能なゲストだったり、使えても活躍の場が僅かしかない。ゆえに、己の力に頼るしかない。

だが、それを困難なものとする第二のイレギュラー要素がある。武器だ。SRPGよろしく、回数制限が設けられているのだが、ほとんど一ケタ台。僅か数回しか使えないのだ。一応、回数を超えても武器が壊れることはないが、威力が大幅に低下し、それぞれの武器に備わった専用の特殊攻撃が使えなくなる。当然、回復する手段は、マップのクリアと一つの例外を除いてなし。

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主人公の武器に至っては特に低い。たったの三回だ。その回数の戦闘、あるいは二回攻撃発生のケースも踏まえれば二回で使用不能になる。あとは袋たたきの運命を辿るだけ。

本記事冒頭のあらすじにおける”大ウソ”というのは、このことを指している。主人公、ものすごく弱いのだ。魔物の軍勢を退ける力など無いのである。
よって、そこから導き出される、マップ攻略の最適解は……

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逃げる!
戦闘しない!

まさしくイレギュラー……SRPGちゃうやん、脱出ゲームやんけな戦術が基本になるのだ。この関係で一つのマップに要する時間も短め。テンポ良く行けば、2~3分でクリアできる。そして、正気を疑う初見殺しがてんこ盛り。

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この悪意に満ちたマップの構成が第三のイレギュラー要素だ。そのため、特に初回プレイ時は問答無用でボコボコにされては、無慈悲な形勢逆転が起きる。戦闘を仕掛けても、挽回などできる訳がない事案多数。気付いた時には手遅れ、もうどうとでもなれ。まさにプレイヤーを地獄に叩き落すに等しい構成にされているのだ。

主に象徴的な部分に特化したが、この他にも多くのイレギュラーな要素がある。それもあって、SRPGのお約束に則った戦術など取れば地獄まっしぐら。SRPGらしさは薄め、むしろ、脱出アドベンチャーに近いゲームデザインになっている。特に見つければほぼ一瞬でクリアが確約される「答え」が各マップに隠されているのがそれを裏付ける。

よって、答えを徹底して突けば、あっという間にエンディングに到達できる……と思いきや。本作をクリアするなら、主人公を成長させるSRPG伝統の攻略法を実施せねばならない。矛盾も甚だしいが、そうするしかないのだ。

それを課すのが、最大の売りたるストーリーだ。

「NAROU」の名を冠する意義が込められた珠玉のストーリー

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先のあらすじの通り、基本の設定は異世界ファンタジー作品の王道を踏襲している。ただ、召喚された主人公はひ弱で逃げるしかないなど、始まり方はとても”イレギュラー”。もしくは、現実的。普通の人間が魔物の暴れる世界に送り込まれれば、そりゃそうなるわと、納得してしまうものになっている。

けど、逃げ延びた末に大逆転があるのだろう……と、想像するかもしれない。「NAROU」の名を冠しているのだから、と。だが、現実は非情なり。ちょっとしたネタバレになるが、逆転はない。逃げ延びた末に待ち受けるは文字通りの地獄。自称勇者のまま全てが終わってしまうのである。途中、頼もしい仲間が加入しても、困難を潜り抜けても報われることなどなし。

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特に初回プレイで苦難を乗り越え、最終マップに辿り着いた時、そのどうしようもない現実に打ちのめされるだろう。本作を悪い意味で常軌を逸した作品と印象付けるかもしれない。SRPGに慣れ親しんだ人ほど、怒りを抱くこと確実だ。

だが、その無慈悲な展開こそが本作のキモ。さらにプレイスタイルによるが、その出来事を通してストーリーの”仕掛け”が判明する。そして以降、主人公を徹底的に強化させ、”答え”への到達に奔走していくことになる。あらゆる前提がひっくり返るのだ。

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これ以降は実際にプレイして確かめていただきたいが、ひ弱な主人公、初見殺しだらけのマップ、逃げに徹する構成が必然的なものであることを痛感させられる、見事な理由付けになっている。ゲームシステム、バランスの面にも違和感なく反映されていて、本作のSRPGとしての革新性、そのようなジャンルで呼称するのが難しい実態が明らかになる。
同時に「NAROU」の名を冠した意味も知ることになるのだ。

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ちなみにその名に相応しく、本編の台詞を始めとするテキストも軽妙なノリになっている。登場キャラクター達も個性が強く、特に主人公こと勇者に妄信的な愛情を注ぐパートナーにしてヒロインの「ミーコ」は、本当に「小説家になろう!」生まれの作品に出てきそうな性格。プレイヤーによっては、あまりの濃さに不快感すら覚えるかねないほどだ。脇を固めるキャラクターも女性が多く登場するのだが……いずれも分かりやすいほど”チョロい”。概ねご想像通りな展開も用意されている。

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だが、何気ない雑談に重要なヒントが隠されていたり、ある深刻な状況に繋がる伏線にもなっているなど、ノリとは裏腹に練り込み具合は深い。個性の強すぎるミーコにも重い設定が背後に隠されており、それが表に出て以降はヒロインとしての存在感が増す。他の脇を固めるキャラクターに対しても、最良の結果を求めた行動を取りたくなってしまうはずだ。

「小説家になろう!」出身のいわゆる”なろう系”と謳われる小説には、人気を博して商業化を遂げた作品が多数あるが、世界観や登場人物などの設定が練られてない例も少なくなく、厳しい目を向けられやすい。本作もその御約束を踏まえた所があったり、「NAROU」と名乗っているがゆえに警戒心も抱きやすいだろう。

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しかし、本作の「NAROU」はこれ以上ないほどストーリーとゲームシステムに適したものになっている。確かにこれは「なろう」のファンタジー、ストーリーであり、ゲームだと納得できる仕上がりなのだ。

作品の核心に触れかねないため、ボカしながらの紹介になったが、少しでも興味があれば直にでもプレイし、まずは逃げるしかない展開に身を委ねていただきたい。間違いなく「なろう」の真髄を体験するはずだ。

様々な苦難を潜り抜け、”答え”に辿り着け!

ボリュームも普通にプレイした場合、最速で10~15分程度と短め……と思わせて、20~25時間以上費やすことが要求される意表を突く物量。特に”仕掛け”に気付いて以降は、止め時が分からないほど時間が吸い取られていく。また、エンディングの分岐も用意されていて、プレイヤーの行動によっては思わぬ幕引きを迎えることになる。もちろん、中にはベストなエンディングもあるのだが……恐らく、容易ならざる試行錯誤を体験することになるだろう。プレイヤーによっては、「普通にSRPGじゃんかこれ!」と言いたくなってしまう可能性も。ぜひ、その目でご覧いただきたい。

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他に演出も「SRPG Studio」の仕組みを巧みに活用したものばかりなのが印象的。戦闘シーンも必殺技の度にキャラクターが大胆なアクションを披露するので必見。インフレ全開のダメージ数値にも、さすが「NAROU」と唸ってしまうかもしれない。

詳細は伏せるが、本編の構成が構成だけにゲームが進展しているのかが分かりにくかったり、沢山の同盟ユニットが登場するマップではテンポが悪化する(※早送り可能)、主人公の成長はやや作業気味などの難点もそこそこにある。何より、ミーコの性格と台詞は、人によっては初見時なら読むのが辛く感じるかもしれない。なろう系の作品に苦手意識があるのなら尚更だ。

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だが、それを乗り越えて体験するだけの価値が本作にはある。戦術・戦略性はほぼ皆無、ゲームバランスも無茶苦茶、マップの構成も色々非常識で、もはやSRPGとは呼べない。しかし、その醍醐味はちゃんとあり、手応えもある大変不思議な出来。SRPG好きから嫌いな人のほか、アドベンチャーゲーム好きならぜひ、プレイいただきたい逸品だ。文字通り、異世界に召喚された主人公と共に、勇者に”なろう”。そして、このストーリーに隠された”答え”を見つけ出そう。

なお、作者のウスバー氏は実際に「小説家になろう!」で作品を投稿している。
本作を通して氏に興味を抱いたら、こちらもチェックしてみて欲しい。特に、VRゲームの世界に入り込んでしまった主人公が、ゲーム仕様を逆手に取った「奇妙な攻略法」で窮地を乗り越えていく「この世界がゲームだと俺だけが知っている」は、氏の代表作といっても良い出来となっている。いい意味で意表を突かれること間違いなし!

[基本情報]
タイトル:『NAROUファンタジー』
制作者: ウスバー
クリア時間: 20~25時間
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料

※ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/16510

長編”方言学習”SRPG『Les Apprentis Sorciers ―レザプランティ・ソルシエ―』 魔法使いの双子属する住民連合と反社会的勢力の抗争劇

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いわゆる共通語・標準語とは異なる、特定地方のみ使われる語とされる「方言」。日本国内は語彙やアクセント、文法などの面において地方ごとの差が大きく、コミュニケーションのすれ違いが起こりやすいと言われる。そのためか、地方の方言について学ぶ教材が多く刊行されている。近年ではそれらの学習を目的としたスマートフォン・タブレット向けクイズゲームアプリも作られ、App Store、Google Playストアにて配信されていたりもする。

そんな方言学習教材とシミュレーションRPGが空前絶後のコラボレーションを実現!
……などと言ったら、どう思われるだろうか。
「なんでやねん!?」と、勢い任せに関西弁を発してしまうだろうか。

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とにもかくにも、今回紹介するのはそんな前代未聞かもしれない「SRPG Studio」製作品、その名も『Les Apprentis Sorciers ―レザプランティ・ソルシエ―』である。2019年2月10日より、フリーゲーム配信サイト「ふりーむ!」にて公開されている。

なお、本作で学べる方言は北海道弁となっている。
何故、北海道弁なのか?
それについては後ほど改めて。

迅速な進軍と短所を踏まえた攻略が試される、伝統的SRPG

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ます最初にゲーム内容から紹介しよう。もう既に触れている通りだがシミュレーションRPG(以下、SRPG)、カーソルでユニット(駒)を移動させ、敵に戦闘を仕掛けるなりして、勝利条件の達成を目指すものだ。上より見下ろした視点のマップ、味方と敵の順に行動する「ターン制」など、基本の枠組みもジャンルのお約束を踏襲。また、素早さのステータスに応じて二回攻撃が発生する戦闘、武器の相性による命中率の変化、特殊な効果を及ぼす「スキル」など、某有名SRPG作品にちなんだシステム及び仕様も網羅している。これぞ”伝統的”と言える作りだ。(※ちなみにユニットの永久ロストはなく、復帰方式。)

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ただ、細かい部分は本作の世界観に基づいた差別化が図られている。
特に「スキル」はユニットごとの長所と短所(欠点特性)を強調するコンセプトでまとめられている。また、種類によっては専用の行動コマンドが表示・選択可能。施錠された扉を開けるものを始め、味方ユニットの保護、敵を捕まえてからの装備(武器類)はぎ取りなどの特殊な一手を下せる。また、短所に関連するものでは、取得経験値の減少、特定区域への移動ができないなどの制限もかかり、他のユニットと使い勝手も変わる。これも元は某有名SRPG作品にちなんだものだが、能力ごとの差が大きいため、各々の特徴を踏まえた運用が重要。やや戦術面での違いが現れた作りになっている。

また、本作は全編、迅速な進軍が要求される。それを促すのが疲労システム。特定のターンを超過すると、ユニットのステータスに下方修正がかかるのだ。

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発生ターンはユニットの精神値に基づいて変動し、低ければ早く、高ければ遅くなる。さらに疲労から8ターン経過後のステータスで「困憊」なるものもあり、さらなるステータスの下方修正が実施され、攻撃行動なども封じられて運用不能になってしまうのだ。

唯一、主人公の一人「ハンス」だけは疲労しないが、当人の能力値は低め、且つ序盤から中盤に限定して取得経験値が低くなる制約もあることから頼りにできない。疲労状態になろうが、ある程度成長させていれば敵に歯向かうのもできなくはないが、基本は攻めて、ハンスに頼らない戦術が大事。まさに全編、ターン制限との戦い。スリリングな展開を演出するシステムになっている。

他に後述するが、主人公達の境遇から軍資金は手に入りにくく、店で武器を購入する際は所持している額との相談が必須。全ユニット強制出撃(&一人でもユニットがやられたらゲームオーバーになる)のマップが度々あるため、満遍なく育てないと難易度が跳ね上がるなどの戦略の重要性を痛感させる設定・シチュエーションも。

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プレイ感こそ伝統的だが、攻略周りの味付けは本作特有のもの。それぞれのユニットを能力に応じて活躍させることに重きを置いた、「攻撃は最大の防御」を意識させるゲームバランスが特徴のSRPGに仕上げられている。

だが、本作最大の特徴及び魅力はそこにあらず。
ということで、おまっとさんでした。
方言学習要素と北海道弁である理由のご紹介だ。

方言+日本語表現学習と共に描かれる”任侠団体”との抗争

そもそも何故、数ある方言の中から北海道弁がチョイスされているのか。

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それは主人公二人、双子の魔法使い「ハンス」と「レナ」の設定にある。二人は北海道をモチーフにした島出身の魔法使いの双子で、バリバリの北海道弁で話すのだ。それも標準語をほとんど使うことなく。本作はそんな二人が標準語で話す本土の住民達と交流し、一つの大きな戦いを通して成長していく様子が描かれるストーリーとなっている。

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そのため、本土の住民が彼らの話す内容を理解できず困惑したり、時には主人公……具体的にはハンスが慌てふためく場面が度々挟まれる。そして、そのような場面になると、特徴的なジングルと共にクイズイベントが発生。表示される選択肢の中から、正しい一つを選ぶことになるのである。もちろん、制限時間付き。

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正解すればステータスアップのボーナスを獲得。不正解、時間切れだとボーナスなしでその後のストーリーが進行する。別に間違えるとゲームが進まない、ストーリーが分岐するみたい仕掛けはない。普通に知識が試されるだけのイベントだ。

ただ、問題の内容は非常に真面目且つ、挿入タイミングの唐突さもあって手応え十分、プレイヤーの焦りを誘うものになっている。さらに問題は北海道弁にちなんだものばかりではない。日本語の表現、音楽に関する問題も登場する。むしろ、そっちの方が多いぐらいで、随所でごく当たり前な表現の正しい使い方を問われるのだ。

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なので、北海道弁のみならず正しい日本語知識、音楽の基礎も学べる。
なんでそこまで網羅しているのか、と聞かれても「サッパリ分からん」(作者様に聞いてください)としか言い様がないのだが、こんな摩訶不思議な要素があるだけでもインパクトは抜群。プレイヤーに謎めいた体験と正しい知識を与える、衝撃的なイベントになっている。そもそも、SRPGをプレイしながら方言などが学べるというだけでも前代未聞すぎる。

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さらに学習ゲームらしく、方言について解説した注釈も充実。物量も多く、読み切るだけでも結構なボリュームだ。しかも、本編は順を追って新しい方言を解禁していく、”文字通りの”レベルデザインが徹底されているので、各種表現を緩やかなペースで学んでいける。常に用語集を読みながらのプレイを心がければ、エンディングを迎える頃には北海道弁の基礎をほぼ習得できてしまうのだ。個人差にもよるが。

おまけ的な意味合いも強いが、ちゃんと教材として完成され、主人公二人の設定を活かした作り込み具合には作者の力の入れようを感じること間違いなし。本作の圧倒的な個性の強さも一緒に感じてしまうだろう。

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そんなクイズと共に描かれるストーリーも大きな見所。自治体の有志によって結成された住民団体が、国の暗部を牛耳る反社会的勢力……という名の”巨大任侠団体”に戦いを挑むという内容になっている。

SRPGのストーリーと言えば、世界観がファンタジー系ならば国家間の戦争、魔物の軍勢との戦いが定番だ。だが、本作は世界観こそファンタジーながら、描かれるのはバリバリの民間抗争。ありそうでなかった、とても珍しい設定にして、対立構図となっている。肝心の内容も特に敵側の描写が濃く、カタギ(民間人)には絶対に手を出さないという信条、平均年齢の低い幹部勢の背景などには、ただの悪人とは思えない魅力に溢れている。彼らを統率する大ボスの”会長”も知略に富んだ人物として描かれており、大物感も抜群だ。

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それでありながら、全編シリアスでないのも面白い。そもそも主人公のハンスからしてグータラなダメ男。随所で妹のレナを怒らせるトラブルの数々を繰り広げる。敵側も幹部級はシリアスだが(※一部除く)、下っ端は愉快な面々揃い。想定外の攻撃に慌てふためいたり、猫ちゃんモフモフなやり取りを繰り広げるなど、思わず肩の力が抜けてしまう愉快さがある。

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そして、国内情勢を報じる新聞記事。ストーリーが進む度に挿入されるのだが、これが痛烈な社会風刺とあるあるネタ満載の内容。レイアウト、文体に至るまで実在の新聞っぽく仕上げられていて、ちゃんと元ネタを意識して作り込んだこだわりに溢れている。

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あちこちに仕込まれたパワーワード、現実のスキャンダルを皮肉った速報記事も見所。後者に関しては、かなり際どいネタを扱っているので、人によっては冷や汗をかいてしまうかもしれない。

こんな濃すぎるストーリーも北海道弁などの学習と一緒に楽しめる。
プレイすれば、恐らくほとんどの人がこんな感想を持ってしまうだろう。

至れり尽くせりにもほどがある!

唯一無二の”学習系&民間抗争SRPG”ここにあり

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ちなみに総ボリュームも膨大。マップ50以上、エンディングまで30~45時間以上という紛うことなき長編だ。さらに四種類の難易度、クイズ全問正解などの極めたいプレイヤー向けの要素も完備。二周目以降も楽しめる。

マップも個性付けがしっかりしているほか、素早い進軍が要求されるシステムの関係上、攻略所要時間は長くても1~2時間程度とホドホドで、テンポ良く進めていける。また、作中の音楽は全曲著名なクラシック音楽で構成。聞き慣れた楽曲で反社会的勢力との戦いに興じるのは異様な荘厳さがあり、強く印象に残る。

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他に演出も昭和時代のコント番組を意識したネタが随所に。ノーダメージ判定のたび、某”喉を自慢する番組”の鐘が鳴り響く演出も面白く、思わず身体がスッテンコロリのドンガラガッシャンだ。

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ユニットの個性を表現する都合でコンフィグの速度設定が不可能(※イベントスキップは可能)、カーソル音がキンキンしていて耳障り、経験値を二倍取得するスキルを持つユニットがエースになりがちなどの難点も散見されるが、出来は良好。長編ゆえにまとまった時間が必要となるが、それ相応の濃すぎる体験が詰まった、空前絶後の学習系SRPG。同ジャンル好きはもちろん、少し変わったストーリーも楽しみたければぜひ、プレイいただきたい大作だ。魔法使いの双子と共に反撃率100%の社会の闇に挑もう。北海道弁も学んじゃおう。

[基本情報]
タイトル:『Les Apprentis Sorciers ―レザプランティ・ソルシエ―』
制作者: TAK-HOK
クリア時間: 30~45時間
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料

※ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/19511


聖剣を元に戻し、復活する魔王を迎え撃つ勇者と聖女の物語……?闇を潜めし短編RPG『ディアーレイス』

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前回の魔王討伐より50年。魔王を倒した勇者の生まれ変わりである主人公は、来たる魔王復活の時に備え、「聖剣」を手にするための継承式に臨む。

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そして、聖女「クレイア」と共に剣が安置されている遺跡へと向かった主人公。だが、そこで魔王の配下「失望のレイス」と遭遇。二人は辛くもこれを退けるが、聖剣は彼の者の策略で黒く穢され、力を失ってしまっていた。

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このままでは魔王に対抗できない。
二人は聖剣を元に戻すため、四つの聖域を巡る旅に出る。
果たして、剣を元に戻し、魔王復活に備えられるのだろうか。

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『ディアーレイス』は個人サイト「箱庭のイデア」にて、多くのフリーゲームを公開・配信している栄崎氏制作による短編ロールプレイングゲーム。2019年3月20日にフリーゲーム配信サイト「ふりーむ!」で公開。同年5月2日には最新のアップデート(Ver2.00)を反映させる形で「フリーゲーム夢現」でも公開された。

属性効果大きめの戦闘バランスが特徴の短編RPG

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内容は城下町を始めとする拠点、「聖域」ことダンジョンの個別マップをストーリーに沿いながら巡るロールプレイングゲーム(RPG)。プレイヤーは勇者の生まれ変わりである主人公となり、穢された聖剣を元に戻し、魔王復活に備えるための旅に身を投じていく。勇者と魔王と、今時、珍しいと言わんばかりのベタベタなファンタジーをなぞったストーリーで、人によっては懐かしさと実家のような安心感を抱かせるものになっている。

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システム、具体的には戦闘周りもこれまたファンタジーRPGの王道とも言えるコマンド選択方式。行動順序も素早さの勝るキャラクターからという、定番の仕組みになっている。また、勝利する度、戦闘時に受けたダメージが全回復。次の戦闘も万全の態勢で始められる、良心的な配慮が凝らされている。

裏を返せば、敵の火力が高い。さらに属性相関の概念もあり、主人公を始めとするキャラクターそれぞれに固有の属性が設定されている。
そのため、弱点に当たる属性の攻撃を受けでもすれば、瀕死の重傷を負ってしまう。敵も同様で、弱点の属性攻撃を決めれば、短期決着に持ち込むことが可能だ。

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そのため、相性を踏まえた対策、戦闘中の体力変動(どのキャラクターが一番ダメージを受けるか)への注視が要求されるバランスになっている。しかも、本作には「防具」が存在しない。「アクセサリー」はあって、特定の属性への耐性を付けることはできるのだが、補助効果が少ない関係で、守り(防御力)を強固なものにするのが叶わない。

極め付け、アクセサリーは城下町の道具屋で売られているものでほぼ全てに加え、いずれも突き抜けた補助効果を与えてくれない。結果的に終始、弱点属性を突かれる危険が付きまとうのである。どんなにレベルを上げようとも。

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そのため、正統派RPGの感覚でキャラクターごとの育成指針、戦闘時の戦略を組み立てると面食らうこと必至。「武器」も同様で、本作は戦闘や聖域の探索で獲得できる「素材アイテム(兼換金アイテム)」を用いて強化させる(新たな武器へと発展させていく)仕組みのため、本編を進めても”聖剣以外”の新たな武器が手に入ることはない。なので、常に一連の強化措置を行える城下町の武器屋を訪れては、装備を万全なものにしていく必要がある。

最大二つをセットできる「スキル」、一つだけセットできる「必殺技」も重要だ。こちらは本編の進みと探索、レベルの上昇に応じて手に入っていくので、先の武器、アクセサリーほどの極端さはない。ただ、一部は城下町の「魔法屋」にて購入しないと手に入らないので、時折、訪れては購入する必要がある。

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それにとても大事なことで、本作には回復アイテムも防具同様に存在しない。
ゆえに関係するスキルのセット、入手が戦闘の難易度と結果を大きく左右する。

スキルの使用も「SP」と呼ばれるゲージを消費するが、これは体力と異なり、戦闘開始の度に初期値にリセットされるので、時々「精神集中」のコマンドでチャージしたり、各スキル使用で消耗する量を踏まえた戦略を立てないと、主力が潰されて敗北まっしぐら。回復はあっても、蘇生のスキルがないこともその重要性を嫌というほど意識させる。(※実際は蘇生スキルそのものは存在するのだが……これ以上は本編をご覧いただきたい。)

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▲各種スキルもキャラクターごとに相性があるので、組み合わせによっては弱体化することも……。

このように基本の体裁こそファンタジーRPGの王道をなぞっているが、ゲームバランス、戦略周りにおいて独特の味付けが施されており、意外に神経を配ることが求められる作りになっている。特に属性相関の効果は大きく、回復と蘇生手段が限定されている関係で、強敵(ボス)との戦闘時における緊張感は屈指。序盤はある程度、流れるがままに戦術を駆使すれば勝利できるが、二番目の聖域に差しかかる辺りで、本作の王道ファンタジーRPGの裏に隠された戦闘周りの”闇”を思い知ることになるだろう。

蘇る魔王を聖剣で倒し、世界に平和を……?

本作には他にも極めて大きな”闇”が潜んでいる。
それこそが本作最大の魅力でもある、ストーリーである。

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先の通り、内容はファンタジーの王道、ベタ中のベタと言わんばかりの使い古されたものになっている。勇者の生まれ変わりが聖なる剣を用い、魔王と戦う。そしてヒロインの聖女、騎士と魔法使いの仲間がそれをアシストする。露骨なぐらい、今後どんな風に展開し、結末を迎えるのかが分かりやすい。しかも、最大の悪役たる魔王も「やはりか」と言わんばかりの勢いで蘇る。そして、大体予想した通りの悪行を重ねては、主人公達を翻弄させる。

この一連の展開には、なんと直球な勧善懲悪ストーリーだと思ってしまうこと請け合い。古くからこの手の勇者と魔王の物語をゲームのほか、漫画や小説で体験してきた世代なら、あまりのベタさと予想通りの展開の数々に苦笑いし、人によっては退屈に感じてしまうだろう。慣れ親しんでいない世代からすれば、新鮮さを感じるかもしれないが。

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そんなストーリーが最大の魅力とは何故にと、ここまでの紹介した限りでは首を傾げるかもしれない。だが、実際にそう豪語できるほどのものになっている。あるタイミングで、想定外の”闇”を体験することになるのだ。

例によって、それは実際に見てのお楽しみである。筆者……一応、記述しておくと、この種の勇者と魔王の物語をRPGはもとより、漫画やアニメでも見てきた人間がそれを見た時に起こしたリアクションは、シンプルに”開いた口が塞がらない”だった。さらにそれから間もなく”異常”が発生し、常軌を逸した事態に陥った。それについても詳細は伏せるが、「なにが起きた!?」かと言わんばかりのものだった。そして、そのことを機に本作全体に潜む”闇”に気付かされたのである。

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一個人の誇張気味の感想ではあるが、プレイすれば間違いなく同じリアクションをしてしまうだろう。また、本作の王道ファンタジーRPGという印象も音を立てて崩れ落ちる。人によっては、背筋に何かが走る感覚を覚えるかもしれない。

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作品名の「ディアーレイス」に対しても、序盤こそヒロインのクレイアが持つ必殺技として描かれるため、その印象が強固なものとなる。だが、終盤に差し掛かる頃には全く違う印象を持つことになる。

そんな具合に本作は、そのベタなあらすじとは裏腹なストーリーにまとめられている。序盤の印象が引っくり返る”なにか”があるのだ。少しでもそれが気になるのなら、このようなレビューは読み終えて、本編を始めてみていただきたい。

王道ファンタジーとしての流れに身を任せるがままに……だ。
さすれば、隠された”闇”はより一層、黒味を増して現れるだろう。

勇者とは。魔王とは。全てを成すがままに受け入れろ。

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短編を謳う通り、全体のボリュームは3~4時間程度と短い。しかし、属性の効果が強く出る戦闘の適度な手ごわさ、突如として”闇”が露わとなるストーリーもあって、物足りなさは感じさせない。聖域のマップも特に仕掛けも何もなく平坦だが、長すぎず短すぎずの密度に収まっているほか、戦闘頻度(エンカウント)を設定する「作戦」なるメニューコマンドを完備しているので、ストレスなく探索を進めていける。エンカウント設定以外にも好きなタイミングでダンジョン入口に戻る機能も「作戦」内に用意されているほか、戦闘からの逃走も確実に成功するようになっていたりと、プレイヤーに余計な負担を与えないための工夫は徹底されていて、気持ちよく遊んでもらいたい作者の配慮が滲み出ている。

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ただ、エンカウントはデフォルトの「通常」でも数歩進んだだけで戦闘が発生したり、最小設定「敵を避ける」でもごく稀に戦闘が連続発生するなど、やや不安定。難易度も弱点属性を突かれた時のダメージが大きめゆえ、特にボス戦では回復スキルがない、回復役が倒されるなどした場合は戦闘の敗北がほぼ確約されてしまう。あろうことか、蘇生スキルも”事実上は”無いに等しいので、よりその極端さが現れる。

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結果的にボス戦では、属性攻撃に耐性のあるキャラクターに攻撃を一手に引き受けるスキル「かばう」をセットし、それで全滅を防ぐ戦術が最適解で、戦術・戦略面の単調さが露わになってしまっている。弱点を突かれる緊張感は悪くないが、そこにフォーカスしすぎたことが災いしている感じだ。こればかりは適切な改善策を考えるのも難しい。ただ、せめて蘇生スキルぐらいは弱いものでも用意しておくべきだったのではないだろうか。回復アイテムも回数制限付きのを用意してよかったのでは。決してクリアできないほど難しい訳ではないにせよ、もう少し工夫の余地がありそうなまとまり方は、勿体ないと感じる次第だ。

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とは言え、このベタさの裏に隠された”闇”はインパクト抜群。童話のような雰囲気に満ちたキャラクターのデザイン、幻想的なドット絵で彩られたグラフィックも美しく、独特の空気感を構築している。主人公の性別を変更する機能もあり、女性にするとストーリー全体の百合っぽさが強まるのも、同ジャンルの作品が好きな人には興味深いトピック……かもしれない。

戦闘バランスに若干の難はあるが、なかなか衝撃的なRPGに仕上がっている本作。RPG=ストーリー重視のプレイヤーなら、ぜひプレイしてみていただきたい一本だ。勇者になって、仲間達と協力して世界を恐怖に陥れんとする魔王の野望を阻止しよう。そして、その物語に隠された”闇”をそのまま受け止めよう。

受け止めた後は……成すがままに。

[基本情報]
タイトル:『ディアーレイス』
制作者: 栄崎(箱庭のイデア)
クリア時間: 3~5時間
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料

ダウンロードはこちらから
※ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/19780

※フリーゲーム夢現
https://freegame-mugen.jp/roleplaying/game_7896.html

女の子中心パーティで歪んだダンジョンに挑む、ゆるくて骨太、ちょっぴり百合もあるRPG『ガールズパーティ!』

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……という感じに、今回紹介するのは『ガールズパーティ!(正式名称:ガールズパーティ! 少女と歪みの迷宮)』というロールプレイングゲーム(RPG)である。その名の通り、女の子中心のパーティを編成してダンジョン探索、戦闘などに挑んでいくというものだ。

2019年3月6日より、フリーゲーム配信サイト「ふりーむ!」にて公開。「RPGアツマール」ではブラウザ版も公開されている。(※ただ、作者のいぬまし氏いわく、頻繁に読み込みが入る関係でテンポが悪いため、PCダウンロード版推奨とのこと。)

物語ユルめ、ゲームは本格的の意外性抜群のRPG

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とある辺境の土地。ここに「歪み」と呼ばれる時空の扉が大量発生するようになった。
歪みからは異世界の魔物も現れ、人々に危害を与えるようにもなって大きな問題に。
この事態を解決するため、女性冒険者「リノ」は歪み調査の活動拠点へとやってくる。
そして、志同じく集まった他の冒険者と共に、真相を解き明かす探索に出る。
果たして、その先には何が待つのか。

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少々シリアスなあらすじだが、主要登場人物(厳密には冒険者たち)の大半は女性。基本は彼女たちがキャッキャウフフなやり取りを繰り広げる、ユルい作風の物語となっている。

時折、シリアスなイベントも挟まるが、全体の比率としては2~3割程度。
それもあって、あまり肩に力を入れる必要もなく楽しめる内容だ。

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女性陣も個性派揃いなので、その手のやり取りをお求めの紳士的、且つ百合大好きなプレイヤーなら大満足この上なし。男勝りにおしとやか系、幼女、眼鏡っ娘(+猫耳)まで、色々網羅してますので、大いに満腹となることでしょう。

しかし、ところがどっこい、ちょい待った。
肝心のゲーム部分は本格的。
腰を据えて挑む姿勢が求められるRPGになっている。

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紹介が遅れたが、本作はダンジョン探索&攻略型のRPGだ。流れとしては「ネイブルウッド」と呼ばれる村を拠点に、「歪み」と呼ばれるダンジョン内へと突入。階層を踏破しながら最深部を目指していく。

最深部にはボスが待ち受けており、撃破すればそのエリアはクリア。そして、新たな「歪み」に繋がる続きのエリアが出現するので、再びそこへ突入し、最深部を目指す。以降はその繰り返しだ。

いわゆるローグライクな構成になっている。さらに階層ごとの構造はシャッフル方式で、入るたびにマップが変わる。これもローグライク風だが、シャッフルというのがミソ。つまり、あらかじめ作られたマップがランダムで選ばれていくのだ。なので、最初は草原だったのが、次は神殿、その次は学校と、カオスの極みな展開が繰り広げられていく。

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また、階層には数多くのアイテムが落ちていて、近くで決定ボタンを押すと回収できる(※オプションの接触回収機能をONにすれば、触れるだけで回収可能)。このアイテムの大半が装備品なのも大きな見所。拠点には店があるのだが、売られているのは消耗系のアイテムだけ。武器、防具などの装備品は一切ないのだ。

したがって、ダンジョン内で拾って調達していくのが基本となる。おまけに量が多いので、ザクザク手に入る。拠点で購入できない制約を相殺するかのような設定だ。しかし、何かそれって裏がありそうな、と思ったら実に鋭い。

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大体ご想像の通り、装備にはレアリティが設定されている。基本的に簡単に手に入るものの大半は平凡な装備。より強力なものをお求めなら、ガチャを引き当てる気持ちでガンガン回収するか、宝箱を見つけて開けていくしかないのだ。

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いわゆる「トレジャーハント(トレハン)」をフィーチャーした設計になっている。特に宝箱は普通に開けられるもの以外に鍵が必須の種類が複数あり、グレードの高い宝箱ほど、レアな装備が手に入れられる。
だが、その鍵に限って入手が難しかったり、買うにしても高額のお金が要求される。そもそも、マップがシャッフル方式だけあって、その宝箱に巡り逢えるかどうかも時の運。

それもあって、根気が試されるバランス。これぞトレジャーハント、と言わんばかりの追求し甲斐抜群の作りになっている。しかも、手に入れたアイテムは図鑑に記録される”分かっている”機能も完備。コンプリートのやり込みも熱い。

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敵との戦闘でも時折、稀少な鍵が手に入ることがあるなど、「ハック&スラッシュ(ハクスラ)」の要素が凝らされているのも見所だ。なので探索にしろ、戦闘にしろ、積極的に挑んではアイテムを手に入れていくのが攻略のキモ。

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こんな具合にストーリー、キャラクターはユルい作風でありながら、ゲームはガチガチのガチと言わんばかりの骨太な仕上がりとなっている。女の子がキャッキャウフフする物語を求めて遊んだはずが、気が付けばレアな装備を求めて探索と戦闘を繰り返すのに集中してしまうという、とんでもないギャップを秘めたRPGなのである。なんてこったい。

戦術・戦略を練る醍醐味を突き詰めた、高度な戦闘バランス

それでいて、難易度もユルさ皆無の歯応え抜群という盤石の仕上がりである。
本作最大の魅力はまさにそこにある。全体的に高度なバランス調整が施されているのだ。

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戦闘システム自体は、RPGとしては王道も王道のコマンド選択タイプだ。素早さ(AGI)の数値の高い順から行動していく流れで展開する。また、属性相関もあり、弱点に当たる属性で攻撃すれば大ダメージを与えられるほか、こちらに耐性があればダメージが減少、数値が一定量を上回れば回復効果まで及ぼす設計になっている。

ほかにこれと言って特徴的な要素はない。ザ・スタンダードの作りだ。
しかしその分、バランス周りの調整が驚くほど入念。序盤から終盤まで、一貫して戦術・戦略を練る必要性を問う戦闘を描いているのだ。

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特にボス戦は象徴的な部分。レベルを上げる以外にも、属性を踏まえた装備の変更と言った入念な準備をして挑まなければ、返り討ちにされるほど手ごわい難易度になっている。

攻撃パターン、仕掛けの面でも一方的、且つヌルくしないようにする徹底した工夫が光る。ボス本人がパワーアップしたり、想定外の状態異常技を繰り出して回復役が行動不能になって、有利だった戦況がひっくり返されるハプニングが何かしらあり、プレイヤーを焦らせてくるのだ。その結果、挽回不能に陥ることもあるので、一瞬たりとも気が抜けない。いい加減に力押しを考えたが最後。強烈なしっぺ返しが確約されるのだ。

このような調整が施されているのもあって、どのボスも戦い甲斐抜群。さらに戦闘直前に全回復ポイント、セーブポイントも設置する公平さを尊重した配慮も施されていて、不快な気持ちにもさせられることなく、真っ向勝負を楽しめるのである。

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RPGはボス戦が最も面白く、盛り上がる場面だとお思いのプレイヤーなら、本作のバランス調整の巧みさには舌を巻くこと間違いなし。キャラクター達が育ってくる終盤になると難易度が低下する展開を嫌うなら、感動すら覚えるかもしれない。

しかし、スクリーンショットだけの印象ならこう思うはずだ。
「こんなユルいキャラが敵で出てくる戦闘がバランスいいって、マジかよ」と。

断言しよう。マジのマジだ。
ボス戦にフォーカスしたが、雑魚戦も序盤こそ簡単ながら、中盤が過ぎると属性相関を意識した戦術を心がけないと、返り討ちにされかねない強さになる。基本、レベルを上げれば大丈夫……とはならない。あらゆる要素を活かした作戦が重要なのだ。

百聞は一見に如かずだ。
気になればぜひ、ゲームをプレイして感じ取ってみていただきたい。最初は変な敵キャラクター達の数々に脱力してしまうだろう。人によっては、愛着すら抱くかもしれない。

だが、ある時を境に全てが脅威へと様変わりするのだ。
その瞬間を刮目いただきたい。
この作品の本格的たるゆえんを思い知るだろう。

きっとあなたは夢中となるだろう、ゲームの方に!

戦闘に関しては、自由なパーティ編成も見所の一つ。本編は主人公のリノを加えた、四人でダンジョン探索に挑むのだが、三人を誰にするかはプレイヤーのお好みで選べ、様々な強みを持ったパーティを作れる。

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▲待機メンバーにも自動的に経験値が入る、嬉しいシステムも。

キャラクターごとの個性付けも面白く、それぞれ固有の属性も設定されているので、この歪み(ダンジョン)ではこのキャラを……という具合に編成する楽しさもバッチリ。

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さらにそれぞれのキャラクターには「親睦度」が設定されていて、それによってストーリーの会話イベントで登場するキャラクターが変わってくる仕掛けも。

拠点の宿舎にある「ベッド」で一睡すれば、親睦度に応じてキャラクターがスキルを獲得したり、本編とは関係ないダンジョンが解禁されるイベントも起きるので、積極的に伸ばす分、楽しみも増える。
メンバーがメンバーだけに、百合成分強めの会話劇もあったりするので、その種のものをお求めの方もぜひ、励んでみていただきたい。

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ボリュームもメインストーリー15~20時間以上、アイテムに敵ごとの図鑑をコンプリートする収集要素、サブダンジョンとEXボスの撃破などのおまけも満載で、極め甲斐抜群。ここまでの通り、キャラクターのデザインも個性的の極みで、特に脱力感満点の敵キャラクター達は必見。彼らの所見を綴った図鑑のテキストも要チェックだ。

全体的に雑魚も含めて敵の体力が高めの関係で戦闘に時間がかかりがち、落ちている装備のバリエーションが乏しくて中盤以降から物足りなくなる、設定的に仕方がないとは言うものの質素すぎる拠点マップの全体像など、粗さを感じてしまう部分も幾つか。ダンジョンも終始、シャッフル方式の階層を突破する展開に終始する関係で起伏が無く、終盤辺りになると単調さが際立ってくる。

また、敵とのエンカウントはシンボル方式なのだが、追跡されている状態での横切りが接触判定に扱われるのは結構なストレス。この辺はツールの都合もあるかもしれないので、難しいのかもしれないが、できれば緩くして欲しかったところだ。

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ただ、全体的な完成度は非常に高く、特に戦闘バランスは突出している。トレハン、ハクスラの要素もやり応え抜群、ボリュームもたんまりと、本格的な仕上がりの本作。RPG好きならぜひ、プレイしてみていただきたい意外性抜群の傑作だ。
もちろん、女の子同士のやり取りをお求めの方にもおすすめできる。

だが、遊んでいく内にゲーム部分に心を奪われちゃうことでしょう。
……なってたまるか?なっちゃいますよ、きっとね……。

[基本情報]
タイトル:『ガールズパーティ!』
制作者: いぬまし
クリア時間: 15~20時間
対応OS: Windows
価格: 無料
備考: 対象年齢12歳以上推奨(※セクシャル表現あり)

ダウンロードはこちらから
※ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/19682

※RPGアツマール
https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm7742

“サバイバル”ノンフィールドRPG『最果てを目指す』 溢れる意思を力に変えて少女とロボはゆく

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フィールド移動という間を省いてプレイの密度を上げたノンフィールドRPGは、ゲームデザインにおいて制作者が注力する要素が色濃く出やすい。バトルを主軸としたもの、アイテム集めが楽しいもの、ストーリーを前面に押し出したADV寄りのものなど、それぞれのこだわりを感じる多彩な作品が生まれ続けている。

今回紹介するフリーゲーム『最果てを目指す』 は、独自システムのバトルに素材集めとアイテムクラフト、さらには豊富なイベントシナリオと、こだわりを感じる要素がいくつも存在する、なかなかに欲張った作りのRPGだ。それでいて各要素が取り散らかってはおらず、1つの軸によって絶妙にまとめあげられている。その軸とは“サバイバル”。公称ジャンル表記「サバイバルノンフィールドRPG」に相応しい、創意工夫と計画性、さらには意思の力で厳しい旅路を生き抜いていく作品だ。

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アイテムクラフトが生き延びる鍵となるノンフィールドRPG

本作の主人公は、世界のどこかにあるという“最果て”を目指す少女「ツキ」に生み出されたロボット(名前はプレイヤーが入力)。イレギュラーにより自らの意思を持つロボットとなった主人公は、ツキの望みを叶えるため共に前へと進み続ける。ゲームの流れとしては全100歩のエリアが5つあり、その先にあるという“最果て”へ辿り付くため、戦闘や各種イベントを切り抜けながら一歩ずつ進んでいく。各エリアはそれぞれ行き先が3つあり、登場する敵や入手できるアイテム、発生するイベントが行き先ごとに変化する。

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主人公は自らの意思で行動するロボット。意思を備えたことは制作者であるツキにも想定外のようで……?

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各エリアで選ぶ行き先ごとに、登場する敵や入手できるアイテム、発生するイベントなどが異なる

先へ進むにあたり基幹となるリソースは、主人公のエネルギーを表すEPに、ツキの生命力満腹度。これらはエリア毎に設定された効果で一歩ずつ増減するほか、任意のタイミングでEPを消費して行うアイテム探索や、戦闘でのダメージ、各種イベントの結果など、さまざまな状況で変動する。EPと生命力のいずれかが尽きるとゲームオーバーで、この2つを回復させる休息で大きく消費する満腹度も含め、3つのリソースのいずれも枯渇しないよう管理するのが生き延びるための最優先事項となる。

探索で見付けたり、敵を倒すなどして入手できる素材アイテムを合成して様々なアイテムを制作するクラフト要素もプレイにおいて大きな比重を占める。作れるアイテムには回復や戦闘の支援に使う消費アイテムのほか、特定エリアにおける悪環境(暗い、暑いなど)を緩和するランタンや耐熱外套、休息の効率を上げるテントといったサバイバルのための道具もあり、何を作れるかは素材の所持に関わらず最初からすべて確認可能。必要なアイテムを見定めて素材を確保していくのも重要なサバイバル術となっている。

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状況や手持ちの素材、これから入手できそうな素材などを見定めて、どのアイテムを作るか検討していく

レベルアップで入手するポイントにより上げることができる、「カリスマ」「知識」といった非戦闘系スキルの存在もユニークだ。最果てを目指す旅の中で遭遇するイベントでは選択肢で判断を迫られる場面があり、その際には選択するために特定のスキルが必要となる選択肢が表れることも。EPなどのリソースを消費する代わりにスキルを活かしたトラブル解決が可能になるなど、戦闘とは別の形で旅の障害が演出されている。

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選択肢によりイベントの結果が分岐。前提スキルが必要な選択肢やリソースを消費する選択肢もあり、ゲームブックやTRPGのような趣も感じられる

論理思考で切り抜けるバトル。それでも敵わないなら“意思”の力で覆せ

本作の戦闘はターン制のコマンド選択型。敵は常に1体で、HPや防御力を表すDEF、先手後手の判定に使われるSPDなどのステータス、そして「30ダメージの2回攻撃」といった行動内容がすべてオープンになっている。主人公は「通常攻撃」「貫通攻撃」などの攻撃行動と「防御」「回避」などの防御行動の両方を、それぞれ4つから1つ選択して攻めと守りを同時に行うのが特徴で、加えてツキはアイテムでサポートする。

DEFの高い敵にはこれを無視できる貫通攻撃を繰り出したりと、状況に応じたコマンドを選択していくのが基本。ただし敵の攻撃にも「防御無視」「必中」とこちらの一部の防御行動を無意味にするものがあり、いかに被害を抑えつつ、着実にダメージを与えられるかの最適解を模索するパズル的な戦闘に仕上がっている。

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攻撃行動、防御行動ともに4つのコマンドから1つずつ選んで行動する

と、ここまではノンフィールドRPGでは比較的ポピュラーな“1手ごとの価値が重いロジカルなバトル”の範疇だが、本作のバトルの真骨頂はこの先にある。各エリアの100歩目に待ち構えるボスや終盤エリアの敵などは、現状のステータスでは防ぎきれない攻撃や「防御無視かつ必中で高ダメージ」などといった一見理不尽な攻撃を仕掛けてくることも。そうした「詰んだ」ように見える状況を覆せる力が主人公には備わっている。それが≪意思≫システムだ。

主人公はゲーム開始時に3つある「意思」を1つ消費し、通常攻撃や貫通攻撃なら威力を倍増、防御は軽減できるダメージ値を倍に、先手を取ったときに敵の一部行動をキャンセルできる防御行動「妨害」を後手でも有効に……などと、コマンドの効果を大幅に強化可能。これにより本来なら凌げない攻撃を凌いだり、敵が行動する前に一気に倒し切るなど戦術の幅が広がる。比較的シンプルなコマンド選択に「回数限定の超強化」という要素が掛け合わされることで、奥深い戦術を堪能できるのが本作のバトルの醍醐味だ。

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そのままでは耐えきれない攻撃を、意思の力で完全無効化することも可能

意思はボスの撃破や特定のイベントなどで回復。初期値であり最大値の3を超えた場合、溢れた意思は意思を回復させるアイテムへと変換……つまり意思をストックしておくことができる。終盤には次々と押し寄せる理不尽を意思の力でねじ伏せるような展開もままあり、これに備えてどれだけ意思をストックしておけるか、というのも重要な生存戦略となるだろう。意思はイベントで本来選べない選択肢を選べるようにするなど戦闘以外の使い道もあり、使い所の見極めが一際シビアなリソースとなっている。

少女とロボは共にゆく。厳しい旅の支えとなる軽妙なシナリオも見所

ここまでの紹介で察せられるかもしれないが、本作の難易度は比較的高め。エリアによっては一歩ずつ減っていくツキの生命力に焦り、新しいエリアに到達すればいきなり詰むような敵が出てこないか戦々恐々とする。そんな緊迫した最果てへの旅路の光となってくれるのが、少女とロボットが共に苦難を乗り越え、旅を通じて交流していく様子が軽妙なテキストで描かれるシナリオだ。

本作のイベントシナリオは主人公視点の地の文とツキの台詞で構成。抑制の効いた、しかし決して無感情ではなくツキへ対する温かい視線も感じられる地の文と、旅への覚悟を固めつつもそこで起きるさまざまな出来事への好奇心も隠さないツキの軽やかな台詞回しが交互に掛け合う形で、心地良いテンポ感の文章に仕上がっている。イベントはトラブルだけでなく休息時などにも発生。最果てという未知の場所を目指す旅ならではの不思議な出来事や、コミカルな一幕などもあり、どれもが旅の大事な想い出となることだろう。

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意思を持つロボットと少女の交流が軽妙に、ときに情感豊かに描かれる

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進行状況や持っているアイテムなどに応じたツキのコメントが随時挟まれる要素もあり、旅路を賑やかなものにしてくれる

本作は一度の挑戦でクリアすることは難しいかもしれないが、旅の途中で入手でき、戦闘コマンドを変化させられる「心装」はゲームオーバーになっても次回以降のプレイに引き継げるほか、進行状況に応じて解放される「残滓」をセットして初期ステータスを上げる要素もあり、周回によって少しずつ強くなることが可能。何よりプレイヤーの知識と経験が積み重なることで生存率を上げていくことができるだろう。

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「心装」により追加効果の付与など戦闘コマンドを変化させることが可能。入手した心装は次回以降のプレイにも引き継がれる

さまざまな名作を生み出してきたノンフィールドRPGというジャンル。本作『最果てを目指す』はシステムなどの面でそうした過去の作品から受け継いだものも感じさせつつ、ただ戦いを“勝ち抜く”だけでなく、ものづくりや多様な状況を切り抜けるための技能、さらには旅路に寄りそってくれる存在により、“共に生き抜く”ことを軸とした本作だけのプレイ感を醸成していると感じさせられた。

1周は比較的コンパクトでありつつ、クリア後もエリア進行の別ルート開拓やハードモードなど、やりこみも楽しめる作品となっている。少女と共に最果てを目指す旅に興味があれば、恐れずにぜひ足を踏み入れてみてほしい。その旅は厳しく困難であっても、決して孤独ではないのだから。

[基本情報]
タイトル:最果てを目指す
制作者:Huyumi氏(ゆりかごは夕月にて
クリア時間:初クリアまで約2~6時間(公称)
対応OS:Windows
価格:無料

ダウンロードはこちらから
https://freegame-mugen.jp/roleplaying/game_8289.html

革新系フリゲRPG『ポルト・ガーディア』 魔王は勇者に任せて守るは港!そして、胡散臭い話に釣られてガッポリ大儲けの大破産じゃい!?

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昔々、魔王の脅威に晒されている西洋のとある国。
港は観光客と交易品に溢れていた。
しかし、そんな港を魔王の手下達が襲う!

あなた(フリスト)は、港のお守「防港人」として、観光客と交易品を魔物から守るという使命がある。送られてくる荷物を仕分けながら、襲い来る魔物達を倒し、港を守り切るのだ!

なに、元凶の魔王?
そんなの勇者に任せときゃいいんです。餅は餅屋だ!

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……というノリのプロローグと共に始まるのが、今回紹介する『ポルト・ガーディア』(作者:サカモトトマト氏)だ。2019年7月21日から8月24日に渡って開催された、第11回「WOLF RPGエディターコンテスト(通称ウディコン)」にて総合成績13位、熱中度部門8位、斬新さ部門3位、遊びやすさ部門7位の成績を残した作品でもある。

交易品を処理しながら、敵を迎え撃つRPG……?

あらすじの通り、プレイヤーは港を守る「防港人」となり、荷物の仕分けと魔物の迎撃に従事するというのが基本的な内容となる。
ジャンルとしてはロールプレイングゲーム(RPG)に属する。

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より具体的な流れを紹介すると、本編はステージクリア方式で進行。用意されたフィールド上に交易品という名の「ブロック」を積み上げ、同じ色同士を3つ揃えては消していく。積み上がったブロックがフィールド上部分にある赤いラインを超えるとゲームオーバー。そのままステージの最初からやり直しになるという仕組みだ。

……物申したい気持ちがエクスプロージョンしたかと思われる。
某有名格闘家の画像を貼りたい衝動にも駆られたかもしれない。

ええ、まさしく見ての通りでございますよ。
落ちモノパズルゲームです。

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それも、同じ色を縦、横に3つ以上揃えて消していく、この手のジャンルにおいて伝統的とも言えるルールを採用したものだ。

これをRPGだとか、書き手の目は節穴かとも言いたくなるかもしれない。
失敬な!断じてそんなことはないわ!
いや、でも最近視力落ちてきたけど。

……って、そんなことはどうでもいい。
話を戻す。確かにご覧の通り、本作は落ちモノ系パズルゲームだ。
どこをどう見てもRPGとは言えぬ見た目をしている。

しかし、遊び心地はRPGそのものなのだ。
それを象徴するのが各種ブロック。それぞれを消すことで、プレイヤーのステータスが強化されたり、アイテムやお金が手に入ると言った現象が起きる。さらにスコアが一定値に達すると、魔王の配下(魔物)との戦闘イベントが発生。

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それというのが、RPGお馴染みのコマンド選択式。パズルゲームのように連鎖を重ね、妨害ブロックを送り込んで相手を詰ませるものではない、正真正銘の戦闘なのだ。流れも速さのステータスに準じて行動する、これまたRPGの伝統的な方式。

そして、戦闘を勝ち抜けば経験値をゲット。
一定量に達するとレベルが上がり、プレイヤーが強くなる。

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だが、戦闘終了時の体力は全回復せず引き継がれる形に。なので、パズル側に戻ったら回復を行うブロックを消し、次に戦闘が発生した際に万全の態勢で挑めるよう、準備を重ねていく。それらを繰り返しつつ、画面右側の情報欄にある「進行度」が100%に達した時に現れる魔物のボスを撃退できれば、ステージクリアになる。

このようにやることは落ちモノパズルなのだが、それ自体がプレイヤーの強化・準備のパートに位置付けられていて、戦闘がコマンド選択方式で進行する。なのでRPG色強め……というか、ほとんどRPG。
さながら、パズル+RPGを体現した作品になっているのである。

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ちなみにステージ開始の度、プレイヤーのレベルは1から、アイテムは未取得で始まる仕組み。この辺はローグライクをモチーフとしている。

パズルとRPGが絶妙に融合した革新的なゲームデザイン

例によって、本作の魅力はこのパズルとRPGが合体したゲームデザインの革新性だ。
さらにプレイヤーのペースで遊べる”ユルさ”も大きな特色になっている。

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落ちモノパズルは、上から徐々に落下してくるブロックを着地前に適切な位置へ動かし、同じ色と揃えて消していくのが基本的なプレイスタイルだ。そして、難易度を上げるほど、ブロックの落下速度が増し、素早い判断と操作が要求されるようになる。

特に対人戦ではある種、大連鎖の応酬が繰り広げられやすい。昨今流行りの「eスポーツ」においても、やはりプロ選手の対戦はほとんどそんな傾向にある。

それらの特色などから、落ちモノパズルへの苦手意識を持つ人も少なくはない。ゆえに本作のパズル主体のシステムにおいても、「難しそう」、「素早い判断が求められるのだろうな」という先入観を持つだろう。

しかし、本作ではブロックの落下位置をプレイヤーが自由に決められる。そもそも、徐々に落下してこない。プレイヤーが落下の操作を行わない限り、フィールド上部に留まり続けるのだ。

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さらに操作を行った後は、その指定した場所へ瞬時に落とされる。落としている途中、方向キーで調整する必要もなく、「シュパッ」とその場へと着地するのである。いわゆる「ハードドロップ」だ。

そして極め付け、何秒以内にブロックを落とせという決まりもなし。すぐ落とすのも、じっくり長考してから落としてもお構いなしなのだ。だから連鎖を組みたい場合も、積まれたブロックの並びと消した後の動きを考える時間的な余裕が常にあるので、ちゃんと考えながら置いて行けば、5連鎖以上を決めるのも夢じゃない。

まさにこの手のジャンルに抵抗のあるプレイヤーでも気負わず楽しめる設計。それでいて、落ちモノパズルゲームのお約束に一石を投じる、大変意欲的な試みを施した仕上がりになっているのだ。

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実際にプレイしてみれば、その意外な遊びやすさと気軽さに驚くこと請け合い。また、どのように考えることで連鎖が実現するのかという、落ちモノパズルゲームを遊ぶ際のテクニックが学べるのも結構な見所。やり込めばやり込むほど、本作と消し方が共通する別の落ちモノパズルゲームを遊んだ時の光景が変わるのは、「少しでも上手くなりたい」「連鎖できるようになりたい」との願望を持つプレイヤーに、一種の感動を与えるだろう。

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さらに嬉しいことに本作は難易度選択機能も完備。より気軽に楽しみたいという欲求にも応えてくれる。逆もまた然り。特に上級者向けの「究極」は、本作特有のRPG要素と混じった唯一無二の緊張感を堪能できるので、腕に自信のあるプレイヤーほど、チャレンジしてみていただきたいところだ。

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全体のバランスも非常によい塩梅。パズルとRPG、どちらかが苦手では進めることすら無理というのもなく、最低限の連鎖と複数消しができる程度にテクニック、戦略があれば難なく乗り切れる難易度に落ち着いている。ステージ開始前に一部、サポートアイテムを持ち込める救済措置も用意されているので、上級者向けの難易度でない限りは苦戦する心配も皆無だ。

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また、ひたすら消すこと、戦うことに徹する訳でもないステージの構成(流れ)も秀逸。ブロックの1つ「緑色のブロック」を消す度に何かしらのイベントが起きては、様々な挑戦を促してくるので、退屈することなく進めていける。

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時には儲け話を振ってきたり、怪しい薬を売ろうとする人物も現れ、運が良ければ相応の対価が支払われる一方、運が悪いと窮地に追い込まれたり、想定外の弱体化を招いたりも。折角、途中まで順調に進んでいたのが、一時の判断ミスでひっくり返されてしまった時の絶望感たるや、「おのれ新規事業!」となること間違いなし。(※名指し)

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イベントの最中、現れるキャラクター達も個性的すぎる容姿をしているほか、台詞もいちいち面白いので、嫌でも印象に残るだろう。特に憎悪と破壊の店の主は色んな意味で必見だ。

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そして、新規事業の協力を仰いでくる人物には厳重注意である。
こいつだけは絶対に信用しちゃあかんで。(※振り回された人間は語る)

やり込み甲斐も抜群の傑作。だが、上手い話にご用心!?

合間に挟まれる戦闘もパズル側で手に入れた「アイテム」を活用して強敵に対抗するという、独特なバランスと作りが秀逸。比較的効果大きめの属性相関もあり、弱点を突けば一撃必殺もあり得るレベルの致命傷を与えられるのが爽快。アイテムが多ければ多いほど、豪快な戦術を決め込めるようになる構造も面白く、パズル側で関連ブロックを消すモチベーションを大いに高める。

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かと言って、ステージによっては所持数制限もあったりして、それが状況に応じた売却、積極的な活用を促してくるようになっているのも上手い。
特に前者はイベント発生させる必要があったり、パズル中でも常時使用可能な専用アイテムを手に入れる必要があるなどの制約が課せられているのが絶妙。そのもどかしさには、いい意味で悩まされること請け合いだ。

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他にボリュームもメインストーリーは大体2時間ほどだが、クリア後専用の高難易度ステージ、純粋なパズルを楽しむモードもあったりと盛り沢山。より高い難易度への挑戦、「実績(アチーブメント)」も用意されているので、全てをやり込むとなれば、倍以上の時間を費やすことになるはずだ。場合によっては、延々と遊べてしまうかも。

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妙なユルさに溢れた世界観とストーリー、異様に耳に残る音楽(兼選曲)と言った演出面の出来もよく、ゲームデザイン以外の部分にも独自の味がある本作。

連鎖の手順を教えるチュートリアルがない、ステージ解禁のために支払うお金の額がやや高めなど、気がかりに感じる点もそれなりだが、ゲームデザインの革新性だけでも遊ぶ価値大いにありの傑作だ。パズルゲームが苦手な人も好きな人も、さらに一風変わったRPGをお求めの方もぜひ、遊んでみていただきたい。

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だが、新規事業の協力を仰いでくる人物にはマジで気を付けろ!
上手い話には裏があるんだぜ!

[基本情報]
タイトル:『ポルト・ガーディア(Port Guardia)』
制作者: サカモトトマト
クリア時間: 2時間(※クリア後を除く)
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料
備考: 英語テキスト対応

※ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/21111

全ての冒険と物語、決断は己の意志がままに。フリーシナリオRPG『ARTIFACT ADVENTURE 外伝DX』

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3年後、”厄災”が襲い来ることが予期された世界。

「レグルス王国」の王は過去、厄災に襲われた村に暮らしながら、奇跡的に命を取り留めた主人公(あなた)に対し、3年後に向けた準備……国内で起きている問題への対応を命じる。

それを受けた主人公は冒険の旅へと出るが、行く先々で世界の運命を決定付ける選択に迫られることになる。誰に協力し、何を伝え、そして……無視するのか。

全ては己の意志次第。

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『ARTIFACT ADVENTURE 外伝DX』は、2018年1月9日にPCゲーム配信プラットフォーム「Steam」で販売されたWindows PC用フリーシナリオロールプレイングゲーム(RPG)『ARTIFACT ADVENTURE 外伝』のリメイク兼パワーアップ版。

2019年6月6日より、株式会社room6よりNintendo Switch用ダウンロードソフトとしてリリースされた。

また、約1ヶ月半後の7月31日には、SteamにてWindows PC版もリリース。こちらの販売はオリジナルの『ARTIFACT ADVENTURE 外伝』に引き続き、PLAYISMが担当している。

ゲームボーイカラー版『ARTIFACT ADVENTURE 外伝』

基本的な内容はオリジナル『ARTIFACT ADVENTURE 外伝』と共通。フリーシナリオ形式を採用したトップビュー(見下ろし)視点で展開されるRPGで、3年後に襲い来る”厄災”に備えるため、舞台となる世界の様々な土地や町、迷宮などを自由に巡り、時に魔物とも戦いながら問題解決(クエストの攻略)に当たっていくというものである。

紹介が前後したが、『ARTIFACT ADVENTURE 外伝』は2013年リリースの『ARTIFACT ADVENTURE』の続編として制作された作品。前作はファミリーコンピュータ(ファミコン)を強く意識したグラフィック、昔ながらのターン制によるコマンド選択型バトルのほか、クエストごとに用意された膨大な選択肢によって紡がれるフリーシナリオ構成、70以上のシーンから成るエンディングを大きな特色としていた。

続く外伝はフリーシナリオ(世界を自由に歩き回り、発生するクエストを攻略していく構成)こそ前作から踏襲するも、システム周りを大きく一新。具体的には戦闘が横スクロールのアクションゲームスタイルへと改められた。ただし、基本操作は移動とジャンプのみに特化しており、攻撃は敵に直接ぶつかればいい簡易方式。同ジャンルに苦手意識のあるプレイヤーにも優しい作りになっている。

さらにグラフィックも、1989年に発売された任天堂の携帯ゲーム機『ゲームボーイ』を意識したモノクロ調に。同じく外伝の名を冠し、ゲームボーイ用ソフトとして発売された『聖剣伝説 ~ファイナルファンタジー外伝~』、『魔神英雄伝ワタル外伝』を思い起こすような、全く新しい『ARTIFACT ADVENTURE』としてお披露目されたのだった。

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ちなみに制作の過程で、本作の需要を見極める目的でのクラウドファンディングも実施され、成功を収めている。その出資者に関してはゲーム中にメッセージやアイテムと言った形で登場している。さりげなく、当もぐらゲームスの関係者も名を連ねていたりするので、興味があればチェックしてみていただきたい。

話題が逸れたが、本作はそんな作品にデラックスの名が付けられたものだ。どの辺がデラックスになっているのかは、ここまでのスクリーンショットの通りである。グラフィックのフルカラー化だ。

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同じように最初、モノクロのゲームボーイ用ソフトとして発売され、カラー仕様のリメイク版が発売された作品と言えば、任天堂の『ゼルダの伝説 夢をみる島(ゼルダの伝説 夢をみる島DX)』がある。2019年9月20日、Nintendo Switchでグラフィックをジオラマ風に刷新したフルリメイク版が発売されたのも記憶に新しいところである。

本作はそんな同作を意識し、モノクロだったグラフィックをカラー化している。しかも、1998年発売の『ゲームボーイカラー』の発色仕様に基づき、白に少し黄味のかかっているという細かい再現まで行われている。

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また、グラフィックについては戦闘シーンにも背景が追加。こちらはやや色数多めに描写されていて、ゲームボーイカラーの仕様から逸脱した作りになるが、このような変更が加えられたことで戦闘はより華やかに。洞窟、城内などの環境に応じて背景が切り替わる仕掛けもバッチリで、より臨場感あふれる展開が楽しめるようになっている。

他に戦闘ではプレイヤーの移動速度も上昇し、音楽も新曲へと差し替え。また、ゲーム開始間もなくチュートリアルが挿入されるようになり、操作、戦闘の基本、「アーティファクト」なる特殊な装備品の使い方などを学んだ上で本編を始められるようになった。そして、戦闘に限定する形で2人協力プレイに対応。Nintendo Switch版はJoy-conを分け合っての「おすそわけプレイ」にも対応し、外出先でも気軽に楽しめる設計となっている。

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主に旧『ARTIFACT ADVENTURE外伝』の違いを中心となったが、このように基本的な内容はオリジナルと変わりなくも、グラフィックのカラー化に戦闘全般の再調整、新要素追加などにより、さらに魅力が増した作品に完成されている。Nintendo Switch版に限定すれば、テレビの大きな画面で遊べるようになったのもセールスポイントの1つだ。

全ての冒険はプレイヤーの意志のままに。

しかし、本作屈指のセールスポイントはオリジナル版と共通する自由度の高さだ。

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フリーシナリオ形式を採用しているだけに、どのように遊ぶかは全てプレイヤー任せ。3年後に厄災が来るから、世界を巡って問題解決に当たってくれと王様から命令が下るが、完全に無視して3年後へと飛んでも全くお構いなし。

そこから先も厄災の総本山へ突撃するも、命令を無視したなりの惨状を順に巡る道徳心のない旅に出るもよしと、プレイヤー任せ。まさに遊び方によってその人だけの物語が紡がれる、フリーシナリオの醍醐味を押さえた作りになっているのだ。

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王様の命令に従った時にも様々な選択肢がプレイヤーの前に現れては、その人独自の展開が生まれる。特に最序盤に1人だけ選ぶことになる3人の仲間は、それぞれゲーム全体の難易度だけでなく、攻略法までをも一変させる特徴を持つだけあって、大いに頭を悩ませる。

戦闘面で有利に立ちたいから「ローランド」にするか、探索をスムーズに進めて行きたいから「レックス」にするか、或いは金にモノを言わせたゴリ押しを楽しみたいがために「ハーシェル」を選ぶか。

当然、最適解など存在しない。それぞれを選んだなりの物語が紡がれては、攻略もそれに応じた形になっていくのだ。

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各地を訪れることで発生する「クエスト」も内容こそ、おつかい有り、目的地の探索有り、戦闘ありのRPGの王道に則ったものだが、描かれるストーリーが勧善懲悪とは言い切れないものばかり。プレイヤーに難しい決断を迫ってくる。

炭鉱が魔物の群れに支配されている。
だから、一掃するためにダイナマイトで爆破する必要がある。
だが、そうすれば村を支える財源が消失して廃村の運命を辿ってしまう。
逆に残せば残したで、魔物に襲われる危険が残る。

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奇妙な集団が異界の神を召喚しようとしている。
ゆえに、一刻も早く部隊を突入させ、阻止しなければならない。
しかし、彼らは特に悪いことはせず、神を崇めているだけと訴える。
それでも召喚を許せば、3年後が大変になるかもしれない。

こんなの簡単に選べたものじゃないだろ……と言わんばかりの事態を前に考えなければならないのだ。そして、下した判断は3年後に結果となって現れる。その内容も意表を突くものが多く、つい「どうしてこうなった!?」とボヤきたくなるものになっている。

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言うまでもないが、先の2つは全体の一部だ。他にも数多くの頭を悩ますクエストと選択肢が登場する。中には「これしかないだろ」という、最適解が分かりやすいものもあるのだが……これ以上は直接、ご覧いただきたい。
この世の無常みたいなものを思い知らされるかもしれない。

これら以外に自由度に関してはフィールドマップが非常に広く、最初からほぼ全ての街へと行ける大らかさが異彩を放つ。さらに探索の手間になったり、負担をかけすぎないよう、オープンワールドを採用したゲームでお馴染みの「ファストトラベル」機能も搭載。1度でも訪れたことのある街なら、メニュー画面から瞬時に近場まで移動できるのが嬉しい。

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戦闘もマップ上に置かれた「クモの巣」をチェックすると発生する任意式なのが良心的。しかも、「種火」というアイテムを使えば、対象を焼き払ってスキップすることも可能。件のアイテムも比較的に手に入りやすいので、やりようによっては戦闘を最小限に抑えた探索も決め込めるのだ。

とにかく、全てが自由。ストーリーも決断次第で大きく変わる。攻略法だって人それぞれ。
多種多様な遊び方が許された、本当に大らかなRPGになっているのだ。

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特にRPGのストーリーに対し、プレイヤーがあらゆることに参加できるのが最も面白いと豪語してやまない方には辛抱たまらない内容と言えるだろう。昨今はストーリー性を重視した作品が多くて……と、不満を持つ往年のプレイヤーにもドンピシャ。細かいシステムや作りには今っぽさはあるが、その自由度の高さには確実に琴線を刺激する。

少しでも、それらに興味が湧いたのなら、すぐにでも突撃しよう。Nintendo Switch、Windows PC、どちらでも良しだ。心揺さぶる冒険が待っている。

自由と決断が全てを決める、多彩な冒険壇を紡げ

ボリュームも早めの進行なら5~6時間、じっくり行けば10~15時間ほどと、プレイヤーの遊び方次第で変動。物量的には中編の趣だ。

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ただ、クエストの全容を確かめるとなれば、2周目以降のプレイは必須。最終的には3倍以上の時間を要する形にすらなり得るので、相応の満足感を得られるはずだ。クエストのみならず、各地に隠された「アーティファクト」の回収、あちこちに出没した「渦」を潰すと言った寄り道要素も豊富。前者はかなりの数が用意されているので、完全な一掃を目指すだけでも本編以上の時間を要することになる……かもしれない。

難易度も遊び方次第で変わるバランス。ただ、ボス戦に関しては、3年後の世界での急な難易度上昇が少し引っかかる。具体的にはアクションゲームのように、激しい攻撃を掻い潜って隙を突いていく立ち回りが要求されるようになるのだ。そのため、苦手意識があるプレイヤーは面食らいやすい。特に最終ボス直前の数体は、もう少し加減しても……と思うばかりだ。一応、事前準備がちゃんとしていれば、勝機はあるバランスになっているが。

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難点ではNintendo Switch版に限定されるが、携帯モードだと全体的にグラフィックが一気に縮んでしまう関係で視認性が悪化するのも気になるところだ。ズームモードでもあれば話は違ったのだが、残念ながら未実装。

些細な部分だが、各クエスト3年後のストーリーがアッサリ気味だったり、ゲーム起動時に長いロードを挟むのも気になる所ではある。

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とは言え、フリーシナリオを売りとしたRPGとしては非常によく出来ていて、ジャンル好きを唸らせるフィーチャーが盛り沢山の作品に完成されている。ちょっとした小ネタだが、かの名作インディーRPG『Undertale』の作者Toby Fox氏のメッセージのほか、同作の”あのキャラクター”をモチーフにした装備が用意されているのも見所だ。

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まさに自分だけの冒険と物語が楽しめるRPG。グラフィックに音楽、そしてシステム。どれかひとつに強烈な魅力を感じたのであれば、多くは言わない。この自由と決断の冒険の旅を楽しんでみて欲しい。

その先、どんなストーリーを紡ぐかは……己が意志のままに。

[基本情報]
タイトル:『ARTIFACT ADVENTURE 外伝 DX』
制作者: bluffman games(販売:room6、PLAYISM、Gamera Game)
クリア時間: 5~15時間
対応OS: Nintendo Switch、PC(Windows)
価格: ¥1,000(Nintendo Switch)、¥980(PC)
備考: 12歳以上対象(CERO:B)

購入はこちらから
※Nintendo Switch版
https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000018448

※PC(Windows)版

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